2014 Fiscal Year Research-status Report
複文構成の歴史から見た逆接条件表現の推移に関する研究
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26370534
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
矢島 正浩 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00230201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
揚妻 祐樹 藤女子大学, 文学部, 教授 (40231857)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 条件表現史 / 構文史 / 順接・逆接 / 規範意識 / 上方語 / 江戸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複文構成の方法について、大きくは逆接の意味関係を構成する条件節に着目し、各接続辞による用法体系の推移を明らかにした上で、構文史との関係、中央語対地域語の関係などから変化の説明を試みるものである。 本年度は、逆接条件の分析に先立って、複文構成史の問題のうちでも特に順接条件について、これまでの先行研究においては必ずしも説明が充足していないと思われる課題について、以下の(1)~(3)の観点から調査分析、考察等を行った。これにより今後の逆接条件の分析に供していく知見が得られた。また、逆接条件については、基礎データを得るべく文献中の使用例の入力作業に着手している(以下の(4))。 (1)ナラ条件文が認識的条件文として成立する経緯や事情を調査し、整合的に説明した。その検討を通じて、順接条件表現史というものが、時制表現史・準体法史といった文法史に広く連関する中で説明されるものであることが明らかとなった。(2)近世後期以降近代にかけて起きた順接条件表現の変化を説明するには、書きことば性・規範言語性といった「位相」面からの分析が必要不可欠であることを論じた。(3)近世期上方語と江戸語の間において、条件形を用いた当為表現や接続詞的表現に使用傾向差が認められる。その違いは両地域の表現指向差によって生まれるものであることを、否定疑問文の用法差を分析し、その知見との関連性の中で説明できることを考察した。(4)中古和文の逆接トモの調査を行った。 このうち、(2)(3)についてはそれぞれ口頭発表も合せて行うことにより、方言や文法史研究の立場からの検証を仰いでいる。(1)~(3)については、論文集への投稿を通して公にする予定であり、現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順接条件について、これまでの先行研究において、説明が十分につかないとされていたことがらについて、おおむね納得のいく見解を得ることができた。逆接条件史の分析にも有用な観点な知見が得られている。 ただし、その過程で、新たな課題が得られたことによって、本研究の開始当初は課題としていなかった領域に研究を広げる必要を生じた。研究にとっては好ましいことであるが、その結果として、当初の計画案のうち、逆接条件の調査・分析に関してはやや遅れを生じることにもなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)順接条件史について、依然として究明が不十分な観点については、随時、考察対象として取り上げていく。具体的には、話し言葉の歴史を前提とする口語史においては表立ってこない、書き言葉世界が主導する変化について、さし当たって整理を行う予定である。それは、いわゆる規範的な文体ならではの条件表現体系のありようを明らかにすることに連なるものでもある。 (2)((1)も含めた)順接条件史について得てきたこれまでの知見を踏まえ、逆接条件表現の歴史を記述することが本研究の中心的課題である。その前提として必要なのが、逆接条件に関与する接続辞のデータ化である。当初の計画に従って、段階を追って入力を進める予定である。ただ(1)も含めて想定外の領域に研究が進展していることもあり、当初予定よりもやや遅れている。協力者を仰ぐ等の工夫も考えながら対応していく予定である。 (3)さらに、近代の話し言葉資料の整備を実施する。近代の口語的な資料を発掘し、使用できる形態で用意していくことは、本研究課題にとってはもちろん、日本語の史的研究においてもきわめて重要である。具体的には、明治・大正期から昭和初期にかけて録音された落語資料について、広く研究者が利用できる形で公にできるよう、文字化を行うことを予定している。本研究課題にとっても貴重なデータを得るための重要な意味を持つ作業となる。また、この資料を用いて、多くの研究者が近代語史研究に参入することによって、さまざまな観点から、立体的、本質的な究明が格段に進むことが予想され、本研究課題の進展にとっても益するところが大きいと認識する。
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Causes of Carryover |
当初予定の課題範囲から広がった領域での研究の必要が生じ、その分、近代書き言葉的口語資料の整備に予定していた作業を繰り下げるところとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
近代書き言葉的口語資料の整備を行う。そのためのスキャナー、ソフトウェア、整理用文具類の購入を予定している。複文構成の分析、逆接条件史の説明等で必要となる参考図書類、さらに規範言語の言語史との関係性を捉えていくために標準語成立史等に関係する参考図書等が必要となる。研究分担者と検討会においてデータ分析を行ったり、口頭発表時の発表用資料やデータを持参したりするための携帯用パソコンの購入も予定している。
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