2016 Fiscal Year Annual Research Report
Dialect historical study on Tatarinov "Lexicon" recorded in Aomori Shimokita dialect of the 18th century
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26370536
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
江口 泰生 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60203626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タタリノフ『レクシコン』 / 下北方言 / )母音無声化 / ザダ行の混同 / 四つ仮名の合流 / 単独母音の鼻音化 |
Outline of Annual Research Achievements |
A.タタリノフ著『レキシコン』は江戸期の青森下北方言を反映するロシア資料である。この資料の語彙は村山七郎1965『漂流民の言語』に翻字され、小学館『日本方言大辞典』に用例として採取されていて、重要な資料である。しかし本資料を解読した村山1965には誤脱や解釈違い、訂正の必要な箇所がある。 本研究の目的の第一は、これを完全な形で翻字翻訳するということである。第二には、そうすることによって解読が難しい点を個々に処理するのではなく、全体的視点で整理することができる。第三には、この資料に出現する青森方言を分析する。共通語の影響を受けた現代青森方言とは違って、原型的な言語体系を観察することが可能となると思われる。 具体的には以下の具体的作業目標をたてた。第一に『レキシコン』の翻字翻訳テキストを完成させる。第二に『レキシコン』の日本語語彙索引を完成させる。これには対訳のロシア語を添付したいと考えている。対訳ロシア語があることで、日本語の資料性が高まると思われるからである。第三に、日本語史、東北方言のなかで位置づけ、注釈的作業から、体系的な研究を行い、日本語史・東北方言に新たな知見を拓くことである。 研究実績としては以下のようである。(1)翻字翻訳テキストを完成させ、紀要論文に「注釈」1~8として順次公開した。(2)子音の有声化、母音の無声化、ザ行ダ行の混同などの下北方言の音韻的研究を行った。(3)現代東北方言の一つ仮名状態以前の四つ仮名の分析をおこなった(江口『国語と国文学』27年9月号)、(4)語中単独母音の鼻音化を明らかにした(ヤヌニ、メンボニン、ビンドロなど)。(4)語彙については「注釈」の中で、解説した(カド~ニシン、ビンズギリ、ヤヌニなど)。 前記の作業目標のうち、第一と第三はかなり進んだと考えている。第二については未だ不明の語彙があるため、もう少し時間がほしいところである。
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