2015 Fiscal Year Research-status Report
現実性の概念にもとづく日本語モダリティー論の新展開
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26370537
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮崎 和人 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20209886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 客観的モダリティー / 時間的なありか限定 / 論理的な可能性 / 「することがある」 / 「することもありうる」 |
Outline of Annual Research Achievements |
モダリティーを「現実性」と規定する本研究課題では、現実性・可能性・必然性や時間的なありか限定のカテゴリーが研究対象としてクローズアップされる。本年度は、これらの観点から「することがある」「することもありうる」を述語とする文を対象として記述的な研究を行い、次のような結論を得た。 ①「することがある」は、時間的なありか限定の観点からは、反復性の表現であるといえる。個別主体で頻度副詞(低頻度に傾く)を伴う場合がその典型である。頻度副詞を伴う場合でも、複数主体では、時間の抽象化が進み、タイプ化された事象の反復性があらわされるようになる(高頻度の例が多くなる)。頻度副詞を伴わない場合でも、個別主体の場合は、基本的には反復性があらわされるが、事象の選択的な実現をあらわす例では、時間の抽象化が進み、「する場合がある」にいいかえられるようになる。頻度副詞がなく一般主体である場合には、反復性によってその種を特徴づけるものと、その種の一部にそのような事例が存在するということをあらわすものがある。後者は「する場合がある」「するケースがある」にいいかえられ、もはや反復性をあらわさない。 ②英語のCANのあらわす可能性の意味によく対応するのは「しうる」であるが、論理的な可能性にかぎれば「することもありうる」がより一般的な表現である。「することもありうる」には、EPISTEMICとEXISTENTIALの用法があるが、その基本的な意味はあくまでも論理的な可能性であると考えるべきである。また、英語のCANや「する可能性がある」と違って、動詞は不定形であり、その時間構造はALETHICな可能性をあらわす「することができる」と同じであると考えられるが、過去のできごとの可能性の確認をあらわす用法やレアルなできごとに対する論理的な可能性の検討をあらわす用法が発達してきており、後者では評価的な意味が前面化する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「することがある」と「することもありうる」については、本研究課題のなかでも中心的な考察対象であり、時間をかけて取り組んできているところであるが、本年度は、それぞれの本拠地が時間的なありか限定性と客観的モダリティー(論理的な可能性)のカテゴリーであることをしっかりと確認し、両者を並行的に考察することによって、本研究課題の到達目標に一段と近づくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を早期に公表し、必然性の研究と認識的モダリティーの体系の再構築に取り組み、最終年度には、現実性モダリティー論の理論的な妥当性を主張できるように、本研究課題の研究史上の位置づけや理論の内部体系を意識しながら研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コーパス作成に関する研究補助に関して、雇用した大学院生の作業の進捗状況から、作業の一部を次年度に回すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)