2016 Fiscal Year Research-status Report
現実性の概念にもとづく日本語モダリティー論の新展開
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26370537
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮崎 和人 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20209886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 客観的モダリティー / 時間的ありか限定性 / 論理的な可能性 / 必要 / 主観化 / 「することもありうる」 / 「しなければ」 |
Outline of Annual Research Achievements |
モダリティーを「現実性」と規定する本研究課題では、現実性・可能性・必然性や時間的なありか限定のカテゴリーが研究対象としてクローズアップされる。本年度は、可能性と必然性のそれぞれについて、以下のような研究を行った。 まず、可能性についての研究では、英語のCANとの対照を視野に入れながら、日本語の「することもありうる」という語彙=文法的な表現形式を述語とする文を対象として、時間的なありか限定の観点を踏まえながら、それが表す可能性の意味領域について考察し、<論理的な可能性>の表現として、可能表現の文のパラダイムの中に位置づけることを通して、能力可能・状況可能を表す「することができる」や可能動詞を中心に展開してきた日本語の可能表現の研究を、可能性という客観的モダリティー(objective modality)の研究に拡張することを試みた。 次に、必然性についての研究では、述語として現れる「しなければ」「しなくては」などの否定の条件形式を一種の必要を表す形式と見て、これを「しなければならない」「しなくてはいけない」などの一般的な必要の形式と比較することによって、それらが表す必要の意味領域について考察し、<評価的な必要>や話し手自身や聞き手への<言い聞かせ>といった意味領域に分布していることを明らかにした。そして、「しなければ」などの必要の形式が生まれた経緯を、「しなければならない」などの形式の成立に次ぐ、第二段階の文法化(grammaticalization)および主観化(subjectification)として説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般性の高いカテゴリーであるにもかかわらず、客観的モダリティーという枠組みを採用する日本語モダリティーの研究はこれまでほとんど存在していなかったのに対して、本研究では、実証的な記述的研究を積み重ねることによって、可能性・必然性というカテゴリーについて研究する意義を、徐々にではあるが、示すことができていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究課題の研究期間の最終年度にあたるので、各論として論じ残したテーマについて考察を継続するとともに、研究成果の総括として、モダリティーの体系論に関する考察を行う。また、モダリティーの研究史上に本研究がしめる位置を確認し、今後の展望を行う。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、コーパス作成に関する研究補助に大学院の指導学生を雇用する予定であったが、2016年度に学内で公募された大学院生との共同研究プロジェクトに採択され、大学院生のマンパワーをすべてそちらに投入する必要が生じたため、雇用できなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間の最終年度を迎え、研究成果の総括のために、次年度使用額は、まだ収集できていない言語資料や文献の収集に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)