2015 Fiscal Year Research-status Report
九州方言音韻現象の方言崩壊ヒストリーに基づく方言形成シナリオの構築
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26370540
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
有元 光彦 山口大学, 国際総合科学部, 教授 (90232074)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | テ形 / 音韻現象 / 宮崎方言 / 熊本方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,九州方言の音韻現象(特にテ形音韻現象)を対象とし,引き続き,従来の調査・研究に欠けている言語データを収集・分析することを目的とした。調査地域としては,未調査地域であった宮崎県を対象に,フィールドワークを実施した。具体的には,南部の日南市,中部の西米良村,北部の椎葉村,高千穂町の方言を調査した。フィールドワークの調査地域の決定の際には,九州方言研究者から助言を得,さらに現地でのフィールドワークにおいては,各市町村の教育委員会から多大なる御協力をいただいた。 この調査結果についての詳細な分析は進行中であるが,地域に独特な音韻現象が見られる。今回調査した地域の中では,日南市だけが特異な音韻現象を持っていた。日南市のテ形音韻現象は,前年度調査した串間市や鹿児島県大隅半島地域のものと同様のパターンを示している。しかし,西米良村,椎葉村,高千穂町方言のテ形音韻現象は,日南市とは異なり,共通語に近いパターンが現れている。地理的には,熊本県の東部の山間部と近いということもあり,そこに現れるパターンと同様のものが観察されたことは,非常に興味深いことである。 今回の課題としては,熊本県東部方言と宮崎県西部方言のグルーピングが,地域的にどのあたりまでなのか,境界はどこにあるのか,ということである。また,通時的にも,このグループがどのように形成されたのであろうか,という問題も考えられる。いずれにしても,言語データはまだ不足している。今後も一層緻密な調査が必要であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィールドワークにおいては,やや遅れていると考える。フィールドワークにおける協力者(方言話者)の依頼は,各市町村の教育委員会等を通して紹介していただくため,調査者側の協力者側の日程がマッチしないことが原因の一つである。 しかし,得られた言語データの分析は,おおむね順調に進んでいると考える。今回,宮崎県の一部の言語データを得たことによって,九州東部の状況が見えてきたことは大きな成果である。現在までの分析結果は,論文として発表しているが,今回の宮崎県の言語データは,そこで明らかになったことに,さらなる貢献をしてくれると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,やはり言語データを蓄積していることが最重要である。宮崎県の東部地域を中心にフィールドワークを実施することを考えている。 また,熊本県東部や大分県南西部のフィールドワークも必要であるが,4月の熊本大地震のため,現時点では調査を断念せざるを得ない。従って,九州北部や南部の島嶼部の調査を考えている。調査予定地域の協力してくださる機関等(教育委員会や郷土資料館等)と連絡を密に取ることによって,着実にフィールドワークを推進していきたい。
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Causes of Carryover |
フィールドワークにおいて,教育委員会等を通して紹介していただく協力者(方言話者)と,調査者である当方との日程調整がうまく行かなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フィールドワークができなかった地域については,次年度に再度調査計画を立て直し,調査を実施する。また,当初予定していた地域については,予定通り実施することを考えているが,熊本大地震の影響もあり,熊本県及びその周辺地域については,調査対象から外すことも検討している。九州の島嶼部については,未調査地域もあるため,次年度は,これらも含めて,調査計画を根本的に再構築する必要がある。
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Research Products
(2 results)