2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370544
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
福沢 将樹 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (30336664)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 接尾語 / アスペクト / 動詞 / 名詞 / 活用の種類 / 句の包摂 / 文法化 / 複合語 |
Outline of Annual Research Achievements |
体言性のアスペクト表現の一例として、現代日本語の「-寸前」を取り上げる。その上接語の種類、下接する活用形の分布を、コーパスの用例を基に検討する。上接語と複合した複合語全体としての品詞性について検討する。上接語までは動詞的であるのに、「-寸前」そのものは名詞的な形態をしていることから、意味と形態とのミスマッチが起こっているが、従来の動詞概念を見直して活用の種類の再検討を提案する。 従来これらの接尾語研究は、主に和語系の接尾語を中心に研究されてきたが、現代日本語にはおびただしい種類の漢語系接尾語が存在する。「-寸前」はそうした漢語系接尾語の典型的な一例である。 また橋本文法以降、動詞と名詞の相違は主として活用の有無という形態的特徴によって分けられてきたが、松下文法のように形態的特徴をそれほど重視しない文法もあった。接尾語の下接によって複合語全体の形態的特徴がシフトする場合、橋本文法は使いにくい。杉山品詞論ならば接尾語を「助詞」の一種として分析することができる。語彙概念構造に基づく複合語研究においても、動詞と名詞の相違(或いは「動名詞」として)は論じられているが、接尾語を「助詞」相当のものとして分析するわけでもない。 よって本研究により松下文法や杉山品詞論の再評価につながるとともに、おびただしい漢語系接尾語の記述的研究の重要性がクローズアップする。そして品詞分類と活用の種類の設定に議論を呼ぶことになり、日本語研究において古くて新しい、新たなパラダイムを提案することになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現代日本語の一部の現象についてまとめたのみであり、歴史的変化については手をつけられていない。
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Strategy for Future Research Activity |
残すところあと1年となり、現実的には通史をまとめるのではなく、また韻文や演劇資料に拘らず、文語資料(「抄物」など)も含めた、漢語系接尾語の頻出する資料を用いるような変更が必要である。
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Causes of Carryover |
学内業務の多忙により、研究が十分に推進できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
影印本を含む書籍購入、調査旅費、資料整理のための人件費等に使用する予定である。
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