2016 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ東洋学における日本語論に関する日本語学史的研究
Project/Area Number |
26370545
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山東 功 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 教授 (10326241)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヨーロッパ日本学 / 日本語学史 / ティチング / フィッセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀初頭に成立したヨーロッパ東洋学において、特にフィッセルやシーボルトが招来した日本関係文物の影響や、そこから当時のオリエンタリズム的思考と植民地主義的言語観と日本語との関係や、比較歴史言語学研究にヨーロッパ東洋学(特に日本学)が果たした役割について、言語思想史的知見を加えながら、学説史的に検討を試みる。 本年度においては、吉町義雄氏の研究(『北狄和語考』等)を除いて、ほとんど顧みられることのなかった、ティチング(Isaac Titsingh)の日本語研究の実態や、フィッセル(Johan Frederik van Overmeer Fisscher)の著述"Bijdrage tot de kennis van het Japansche rijk"(1833)の記述について、当時の対訳となる山路諧孝監修、杉田成卿、箕作阮甫、竹内玄同、高須松亭、宇田川興斎、品川梅次郎、分担訳の『日本風俗備考』の妥当性について検討を行った。 シーボルト以前のオランダ商館員による日本語研究については、著述量の少なさ等も影響して、それほど高い評価が得られていないが、実際には、アベル・レミューザやユリウス・クラプロートらの研究によって成立した東洋学に対して、多くの影響を与えていたもの(例えばレミューザ翻訳による" Memoires et anecdotes sur la dynastie regnante des Djogouns, souverains du Japon"等の日本史記述や、クラプロートの"Asia polyglotta"との関係)と考えられる。 また、フィッセルの『日本風俗備考』に関して、日本語会話の章に見られる長崎方言の記述が、現在の研究成果から見ても、おおよその妥当性をもっている点についても確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シーボルト以前のオランダ商館員による日本語に関する言及から、当時の日本学研究の実態を把握することが可能となった。また、クラプロート、レミューザといったフランス東洋学者への影響関係について、資料上からも確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに収集、整理された一次資料をもとに、当時のオリエンタリズム的思考と植民地主義的言語観と日本語との関係や、比較歴史言語学研究にヨーロッパ東洋学(特に日本学)が果たした役割について、言語思想史的知見を加えながら、学説史的に検討を試みる。
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Causes of Carryover |
少額備品購入に関して、当初の予定額を下回る範囲内での支出に抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度におけるデータ入力作業用アルバイト雇用予算を調整する形で、使用計画の適正化を図る。
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