2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370548
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
山本 真吾 白百合女子大学, 文学部, 教授 (70210531)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 敦煌願文 / スタイン本 / ペリオ本 / codicologie / 文体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、4年間を予定しているが、平成26年度はその初年度に当たる。研究実施計画に照らして、最も研究実績として成果が上げられたのは、大英図書館、フランス国立図書館における願文文献の原本調査を実施したことであった。これまで1週間以内の調査期間であったため、紙質や汚損、破損箇所の観察に十分時間がとれず時代判定の進捗がはかばかしくなかったが、平成26年6月におよそ1ヶ月にわたって、大英図書館所蔵のスタイン本願文写本とフランス国立図書館所蔵ペリオ本願文写本の実地調査を行った。具体的には、スタイン本は、s0522、s0607、s0972、s1145、s1160、s1674、s1924、s3875、s5584、s6417、s1318の計11点の願文文献について原本調査を行い、ペリオ本は、p2086、p2122、p2128、p2137、p2182、p2232、p2319、p2384、p2417、p2421、p2443、p2449、p2450、p2542、p2543、p2631、p2642、p2649、p2381、p3346 、p3770の計21点の願文文献の原本調査を実施できた。 これらについて、写本学(codicologie)的情報(紙質及び紙の法量、外題・内題の有無、訓点情報、時代推定の示準となる漢字の字体)をデータ化して整理した。 この成果を踏まえて、国際シンポジウム「言語交渉からみる日本語の諸相」(於高麗大学・大韓民国)で「願文の文体的変容についてー敦煌願文の調査からー」と題して本研究の中間報告を行った。さらに、比較材料のための日本国内の願文文献についても、京都市高山寺所蔵本、東寺所蔵の諸伝本について原本調査を実地に行い、敦煌願文と同様の写本学(codicologie)的情報の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大英図書館所蔵のスタイン本願文写本とフランス国立図書館所蔵ペリオ本願文写本の原本調査が本年度の最も重要な課題であったが、それぞれ貴重書に属する写本であるため、閲覧希望文献の状況によっては破損が甚だしい等の理由で許可されない事態も想定される。幸い、今回閲覧希望の諸写本については、すべて閲覧許可が下りて調査を行うことができたため、自己点検としては「おおむね順調に進展している」という区分に属すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の実績を踏まえて、写本学(codicologie)の手法によって推定された敦煌願文写本のうち、日本側に影響を与えた可能性の高い文献を選定する作業を行いつつ、敦煌文献及び日本側の古写本の原本調査もこれと平行して推進する。また、当該年度には、『敦煌願文集』の全文を入力し、これに、原本調査の際に得た写本学的情報を対応させたデータベースを構築することも計画している。
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Causes of Carryover |
調査期間の設定は、所蔵機関の貴重書管理担当者の都合による。当初計画していた日程よりも5日間ほど短縮したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フランス国立図書館の実地調査を行う予定である。
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