2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370548
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
山本 真吾 白百合女子大学, 文学部, 教授 (70210531)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 敦煌願文 / スタイン本 / ペリオ本 / codicologie / 文体 / 紙質 / 誤字 / 漢字の字体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はフランス国立図書館所蔵のペリオ本を重点的に調査したので、平成28年度はイギリス・ロンドンの大英図書館所蔵スタイン本願文写本の以下の原本を実地に調査をした。s3427「願文擬」、s3557「願文」、s3728「押座文」、s3833「追福文」、s3881「願文」、s3914「願文」、s4191「釈門応用文範擬」、s4275「釈門応用文範」、s4293「帰依三宝発願文擬」、s4364「願文範例」、s4427「願文擬」。これらの諸本について、計画どおり、原本でないと解明し得ない書誌情報の観察に重点をおいて調査を行った。すなわち、紙質、塗抹部分の文字解読の2点である。原本調査実施当初は判定の困難であった紙質観察による年代推定もようやく判別可能なものが多くなり、塗抹部分の文字解読についてもかなり習熟度が向上し、判明する文字も増加した。さらに日本側の願文テキストの古写本調査として、京都市智積院、京都市東寺、滋賀県大津市石山寺等の原本調査に基づき、敦煌願文の古写本との相違について観察した。この成果の一部は、中国・福建省厦門市の集美大学日本語学科企画の「日本語教育と日本語研究講座において「中日文体比較研究の方法ー敦煌願文を資料としてー」と題して、研究発表を行い、本研究課題の中間報告をした。文体比較研究の方法として、原本調査に基づく純度の高い写本によるべきこと、冒頭末尾の表現形式、対句表現や漢語語彙、文章構成に着目することも含めて、塗抹部分の漢字のあり方が敦煌古写本と日本側に伝存する古写本とでは様相の異なっていることを具体的に述べ、意見交換を行った。 なお、これらの原本調査の結果は、エクセルを用いて整理しておりデータベース化を目指しているが、調査漏れの事項や誤りも若干見つかっているのでこの補正をする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランス国立図書館のペリオ本に比べて、大英図書館所蔵のスタイン本の文献量ははるかに多く、原本調査の効率化をはかることを昨年度の課題に掲げておいたが、大英図書館当局の理解も得られ、原本調査についておおむね予定どおりの推進することができた。もとより時間の制約もあって十分でない箇所もあるが、これは次年度の補足調査によって補い得ると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)フランス国立図書館及び大英図書館所蔵の敦煌願文について、原本調査は予定通り進行している。ただし、時間の制約や予想以上に判読に困難を伴う文献もあり、写本学的見地からの情報収集について十全でない部分が残った。これについて、補足調査の実施する予定である。 (2)情報データについての整理がまだ済んでいないので、入力作業を進める予定である。 (3)敦煌願文に基づく語学的研究は中国、台湾の研究者も着手し、その成果を公表している。これらの研究文献の収集に努めることも必要になってきたので、推進してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
大英図書館所蔵のスタイン本敦煌願文の原本調査に連続した日程で、フランス国立図書館所蔵のペリオ本の追加調査を申請したが、日程上不許可であったので、その分が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にペリオ本敦煌願文の補足調査を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)