2017 Fiscal Year Annual Research Report
A comparison between Buddhist prayers from Dunhuang and ancient hand-copied books from Japan
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26370548
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
山本 真吾 白百合女子大学, 文学部, 教授 (70210531)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 願文 / 文体 / 敦煌文献 / 漢字字体 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に実施した研究の成果としては、願文写本のうち、中国側の文献資料として、大英図書館の敦煌スタイン本の願文写本の実地補充調査を行い、これまでの古写本調査の遺漏を補った。さらに敦煌文献に関する情報収集をベルギー(ゲント大学)、オランダ(ライデン大学)において行い、西欧におえる古写本研究の最新情報の入手行った。日本国内資料としては、東寺金剛蔵の願文集の実地調査を行い、当該文献の本文情報を網羅的に収集し、予定通り完了した。当該年度においては、これまでの研究成果の総括を公開すべく、オックスフォード大学において、「大英圖書館蔵スタイン本敦煌願文と日本所在願文の古写本の比較研究」と題する研究発表を行った。 最終年度の総括として行った発表内容は、研究期間全体を通じて実施した研究の成果をまとめたものである。その具体的な内容は、本研究の意義が日本における漢文受容の原初段階の解明にあり、その一階梯として願文写本に着目したことを主張した。これまで漠然と漢文の日本的変容を考究していた段階を一歩進めて、同一ジャンルの、かつ信頼できる古写本原本の調査結果を踏まえてよりダイナミックに日中相互の漢文文体の相違を解明し得るという見通しを展開した。本課題の遂行により、大英図書館(スタイン本)敦煌願文45点、フランス国立図書館(ペリオ本)敦煌願文58点の中国側願文の古写本の調査を実施することができた。書誌情報、漢字字体情報、語彙、語法情報等の分析により、両者の異なりが指摘できる。これまでの調査で、中国側願文の最古の写本は6世紀末、日本側は12世紀のものと判明している。この中で、日本側に見られず、中国側の願文写本の特徴として注目される点に、発音が同じであれば字形の異なる漢字を使用する事例を認めることができた。中国側の願文テキストの生成に音読の要素が関与している可能性を示唆するものと言える。
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