2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370551
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
荻野 綱男 日本大学, 文理学部, 教授 (00111443)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コーパス / WWW / 表記のゆれ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ことばのゆれを主なテーマにして研究を進めた。 一つの単語でも、漢字、カタカナ、ひらがなで表記されるものがある。たとえば、朝顔、アサガオ、あさがおである。これらは、表記のゆれであり、一つの語であるとみて問題はない。しかし、大量データで検討してみると、いろいろな面で違いが現れてくる。たとえば、「朝顔七輪」、「肥後朝顔」、「変化朝顔」、「朝顔市」のような複合語では漢字が使われる。「ツクバネアサガオ」、「チョウセンアサガオ」、「タイワンアサガオ」のような品種名ではカタカナが使われる。それに対して、お店などの名前の一部として使われる場合は「あさがお薬局」、「あさがお保育園」、「あさがお文庫」のようにひらがなが使われる。複合語によって、表記が異なるというのは、すなわち、表記によって用法が異なるということであり、強弁すれば、漢字、カタカナ、ひらがなで意味が異なるということにもつながってくる。このように、従来表記のゆれとみなされてきたものの中でも、そうでない例が見つかっている。 「竹の子」「筍」「タケノコ」「たけのこ」なども同様の例である。しかし、この場合はアサガオと同様に植物名という範囲の話であるとも考えられる。一方、「煙草」「タバコ」「たばこ」の場合は、植物名としての性格が弱いので、品種名はカタカナが多いという傾向はない。別の理由による使い分けが見られる。 このように、表記のゆれをセットごとに調べることを行ってきた。何組も調べたが、それぞれ個別の理由で表記のゆれが説明される場合が多そうである。この点は、さらに検討を加える必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の方言分布の問題、平成27年度の表記のゆれの問題など、WWWを検索して、用例を整理し、結果を確認するところは比較的順調に進展してきた。ただし、そのような結果を得た後、論文として公表する段階が遅れている。手元にさまざまな資料が蓄積してはいるが、それをきちんと文字化し、解釈や考察を加え、論文として完成させるまでのプロセスが十分に進んでいない。このあたりは次年度への課題ともいえそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
WWWの検索と用例の整理のしかたについては、だいたい標準的なやり方がはっきりしてきた。作業者も次第に用例の整理に習熟してきたので、研究が進めやすくなってきた。平成28年度が最終年度なので、作業者にはさらにさまざまな語について用例検索と整理を進めてもらおうと思っている。 ただし、論文執筆は思うようにはかどっていないので、この点はさらに努力が必要なように思う。夏休みなどの、集中的に時間が取れる機会をうまく利用して論文執筆を進めたいと考えている。 平成28年度は、質問調査とWWW検索の結果の比較をメインにするつもりでいたが、ここまでは手が回らないかもしれない。表記のゆれの調査だけで終わってしまう可能性がある。それでも、中途半端な段階でいろいろなテーマに手を出すよりは、ある程度納得がいくまで一つのテーマに集中するべきだと考えるので、そのあたりを考慮しつつ平成28年度の研究のテーマ(のバランス)を考えていきたい。
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Causes of Carryover |
謝金の支出が予定よりも少なくなった。 これは、作業者が病気や家庭の事情などで思うように勤務できなかったためである。無理に代わりの作業者に依頼するよりも、データの整理のしかたがわかっている作業者に継続的に依頼するほうが望ましいと考えるので、平成27年度に支出することを避け、次年度に支出することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、作業者に特段の事情が発生しなければ、前年度の残額を含めて、謝金の支出予定額の全部を費消できる予定である。
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[Presentation] Automatic Isogloss Drawing2015
Author(s)
Tsunao OGINO
Organizer
Ⅷth Congress of the International Society for Dialectology and Geolinguistics
Place of Presentation
Eastern Mediterranean University, North Cyprus
Year and Date
2015-09-18
Int'l Joint Research
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