2016 Fiscal Year Annual Research Report
A study of Insei-Period Sino-Japanese Hybrids: Jien's Gukansho
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26370552
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
アルベリッツィ V.L. 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 准教授(任期付) (60630910)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 和漢混淆文 / 漢文訓読 / 日本語史 / 愚管抄 / デジタル教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の調査結果を受けて,本年度の研究は更なる調査の必要が生じた「語彙」の一面に的を絞り,『愚管抄』における語彙の調査をより深く精密に推し進めるように努めた。〔研究目的〕日本の文章の制作作業は和文的な要素と漢文的な要素を共存させた文体を中心に行われてきた。また,この二つの系統は社会的な要求に応じて細分化し,多彩な文章形式を生み出した。 慈円の文章の場合,口述筆記という方法で書かれたものではないかと推論されている。この推測が正しければ『愚管抄』の異色な文体は聞き書きによるものであるという可能性が浮上し,和化した漢文によって思索していた中世初頭の貴族が,仮名交じり文で口述し,それをそのまま筆記させたときにどのような問題が生じるかを見ることができる。〔研究方法〕そこで,巻3~巻7を調査研究の対象とする。既に特定できた「和」「漢」異系統同義語141語の量的な分析を行い,「和」「漢」の相互特徴を明らかにするように努め,これを通じて具体的に和漢混淆の現象が日本の言語生活にどのような影響を及ぼしたかということについて考察する。和漢語彙が『愚管抄』に現れる度合いという密度分析を行った後,異系統語彙の採用状況を調べるために文脈上での分析を行う。〔研究成果〕上記の研究方法に基づき,下記の結果を得た。 1)『愚管抄』において語彙の面では,「和」「漢」両要素の一定の「併用」が認められるものの,それが真の意味での「混淆」であるのかを認定することが困難である。 2)1)で述べたことの主な原因はそれぞれの系統の特徴の共存にあるのみならず,特にその偶発性と必然性のあいだの度合いにあると思われる。 3)日本の言語生活史における慈円と『愚管抄』の位置を見定め,その言語の分析に新たなる一光を投じるために,中世における講釈・聞書・唱導などの実態に関する和漢の混淆という現象をさらに追究する必要がある。
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Research Products
(3 results)