2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370555
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
熊谷 康雄 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 准教授 (30215016)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語地図 / 言語地理学 / 計量的方言研究 / 方言分布 / 日本言語地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
方言分布データの分析の基盤として,人口分布や交通網の情報のデータ整備を継続するとともに,これらを用いた方言分布データの分析,観察を進めた。データ整備として,昨年度(平成27年度),市区町村別の人口データ(1920年から1980年の国勢調査の時系列データ)を整備したが,このデータの典拠に用いた『人口統計総覧』(1985年)の1920年から1980年の間の「市区町村別の男女別人口」の表では1920年から1960年の間は市区町村別の男女の人口のデータは掲載されていなかったが,その後の調査で,統計局(1985年)の資料に,この間のデータが掲載されていることが分かり,これを用いて欠落部分を補うデータを入力した。当初資料にはなかった部分の男女別時系列データを補い,期間内のすべてのデータを揃えた。また,境域による集計単位の編成基準になっている1980年までの市区町村数の変遷(1920年から1980年まで)を示すデータを入力した。並行して,地理,歴史,交通,人口の観点や,その分析などに関わる資料等の,関連領域の文献調査を行い,データや資料の整備を行った。 これらを利用し,これまでの観察で有効な情報が取り出せた事例などを具体的な検討材料としながら,整備した時系列の市区町村別人口,人口地図,道路網,藩領図等の電子地図などのデータを用い,『日本言語地図』データベースの方言分布データによって計算される言語的な類似関係と,言語外的な情報との相互関係の観察を進めた。ネットワークや分布パターンの分析などにより,相互関係の定量的な表現や把握について検討した。人口分布や交通網と,方言分布に基づく言語的類似関係の定量的な地理的模様との関連を分析することが,言語接触や伝播の現象を追求する上で有効である観点から,分析を継続し,成果の一部を含む論文(平成29年度刊行予定)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
方言分布データの分析における重要な柱のひとつと考えて整備した時系列の人口分布データの典拠に欠けていた部分の情報源が見つかり,データを増補することができ,分析を推進するための基盤となるデータの整備を進めることができた。これまで整備したデータを元に,探索的な分析や定量的な観察を進め,これらのデータや観察が,言語接触や言語伝播の分析に有効である知見を得た。データ整備とデータ分析に関して,成果の一部を論文(平成29年度刊行予定)に執筆した。
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Strategy for Future Research Activity |
交通網や人口データ等の言語外データの作成により,『日本言語地図』の方言分布データから計量される地点間の関係性と交通網,人口分布等との間に当初予想以上の関係が観察でき,言語接触や言語伝播の観点からの有効な知見を得ているが,これらの成果の上に立って,さらに現象を掘り下げ,より多角的な計量的分析方法による実践し,論文の執筆,学会発表(MethodsXVI)等を実施する。
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Causes of Carryover |
平成27年8月にSIDG(国際方言学者会議)への出席を計画していたが,開催地の北キプロス・ファマグスタの周辺国における当時の国際情勢(テロ等の危険)から,参加を見送り,海外渡航のための旅費を支出しなかっために繰り越した分の予算があることが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
より多角的な計量的分析方法の実施のためのデータの補充や論文の執筆投稿,学会発表等を実施するために有効に使用する。
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