2015 Fiscal Year Research-status Report
右方移動現象の分析に基づく併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの解明
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26370557
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 宣美 弘前大学, 人文学部, 教授 (90195371)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 右方移動 / 併合 / 線形化 / 文体的倒置 / 存在文 / 法助動詞の陳述緩和的・根源的意味 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】普遍文法の解明及び構築に寄与するために,例外的あるいは周辺的言語現象であると見なされることが多い右方移動現象の分析に基づき,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案する。
【平成27年度研究実施計画】平成26年度に得られた研究成果を基にして,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの解明に資する構文の特性を抽出するために,等位構造及び等位構造以外で観察される右方移動現象に関する詳細な調査及び分析を行う。
【研究実績の概要】 英語の助動詞/動詞構造は,(1)に示されているような記号配列で構成されている。(1) a. Betsy must have been being hassled. b. finite modal > perfect HAVE > progressive BE > passive BE > lexical verb (Aelbrecht and Harwood 2015) 時制を担う助動詞(定形の助動詞)が述部に生じ,その後に,随意的な要素として,完了の have,進行の be,受動の be が続き,最後に,動詞が生じる。従来の先行研究では,beとhaveは動詞位置に生成され,助動詞位置に移動するとする分析が提案されているが,本研究では,仮説「助動詞のbe/haveと動詞のbe/haveがある。(Kaga 1985, cf. Williams 1984)」に基づき,being が動詞で,それ以外のbeとhaveは助動詞であるとする分析を提案した。すなわち,beとhaveは辞書(lexicon)において動詞か助動詞かの指定がなされ,動詞位置から助動詞位置に繰り上げられるわけではないとする仮説に基づく分析を提案し,複数の助動詞(multiple auxiliaries)が含まれる文の右方移動現象である文体的倒置や存在文の特性及び述語削除と法助動詞mustの陳述緩和的・根源的意味の相関をより適切に捉えることができることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究の目的】普遍文法の解明及び構築に寄与するために,例外的あるいは周辺的言語現象であると見なされることが多い右方移動現象の分析に基づき,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに対する従来の分析の妥当性を検証し,より説明的妥当性のある分析を提案する。
【研究の目的】を達成するために,【平成27年度の研究実施計画】に基づき,以下の研究を実施した。 [1] 等位構造で観察される右方移動現象の特性の包括的な調査及び分析に努め,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの解明に関わる構文の特徴を抽出した。[2] 等位構造以外で観察される右方移動現象の特性の包括的な調査及び分析に努め,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの解明に関わる構文の特徴を抽出した。[3] 右方移動現象の併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの解明に関わる統語論・意味論的特性を抽出した。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実施計画】平成28年度には,平成26年度-平成27年度に得られた研究成果を基にして,等位構造及び等位構造以外で観察される右方移動現象の総合的で包括的な調査に基づき抽出された特性の観点から,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムに関する分析の検証と精緻化を行い,分析の妥当性を検証する。
【研究計画(平成28年度)】 [1] 等位構造で観察される右方移動現象の総合的で包括的な調査に基づき抽出された特性の観点から,併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの検証と精緻化を行う。[2] 等位構造で観察される右方移動現象の分析に基づく併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムについて得られた知見が,等位構造以外で観察される右方移動現象の併合と感覚運動体系における線形化の対応関係に対して,同じように適用できるのか,その分析の妥当性を検証する。[3] 併合と感覚運動体系における線形化のメカニズムの統語論・意味論的類似点及び相違点に基づき,Minimalist Programに基づく先端的言語理論を構築するため,普遍文法 (UG) [脳内の内在化された言語 (I-language) ]の解明及び構築とパラメータ設定の可能性を考察する。[4] 平成26年度-平成28年度に得られた研究成果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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Research Products
(5 results)