2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370560
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 芳久 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (10135890)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知モード / Iモード / Dモード / 認知的言語類型論 / 言語進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、『ラネカーの(間)主観性とその展開』(共編共著、2016年11月開拓社)の出版により、2つの認知モードが鮮明に提示され、認知モードに基づく、より精密な認知的言語類型論の展開と、より妥当性の高い言語進化論の展開が、確実になった。 Dモードに類する主客対峙の単一の認知モードに基づく認知文法の認知モデルでは、日本語に類する言語の緻密な認知分析は十分ではなく、より厳密な形で提示されたIモードとDモードの2種類の認知モードが必要であることが明確に示された。 これによって、これまで認知的言語類型論で扱われてきた言語現象に加えて、日本語特有の語りと英語・独語・仏語の自由間接話法との認知的対照がリサーチの射程に入り、より広範で、緻密な認知的言語類型論への進展が見込まれる。 また既に、認知的には、IモードからDモードへの認知的展開が、主客対峙を基本とする言語の進化に伴うことは論じているが、生物言語学等で主張されているような併合(merge)や結合(combination)が言語の決定的特性ではなく、併合や結合のために必要となる要素の切り出し(displacement)こそが、ヒトの認知の決定的特性であり、ヒトに特有の言語進化を可能ならしめた認知的契機だ、という立論(中村 2015など)がさらに妥当なものとなった。 2016年10月の中部支部英文学会シンポジウム『文法化を問う』(申請者はオーガナイザ、司会・発表者)では、再帰中間構文とこの構文と同じ意味展開を示すget構文との両構文で自発用法から受身用法への文法化(通常とは異なる)がみられるが、この拡張にも認知モードが関与し、また証拠性要素の文法化にも認知モードとの関連があることが示唆された。認知的言語類型論への貢献として評価される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年1月の金沢大学英文学会特別講演でも論じたように、ラネカーの主客対峙の認知モデルに対して、IモードとDモードの2つの認知モードを擁する認知モデルが、より周到な言語分析に必要であることが明確になった。この新たな認知モデルは、認知的言語類型論と言語進化のより妥当な認知的基盤であるが、この理論的基盤は、上記の『ラネカーの(間)主観性とその展開』の出版によって、確実に達成されたと言える。認知的言語類型論の理論的進化精緻化、具体的なリサーチ成も、着実に達成されている。とりわけ言語進化、コミュニケーションの進化に関する理論的考察は、相当に緻密なものになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度であるので、これまでの研究の集成を目指し、できれば形あるものに纏めたい。本研究を通して、新たな展開を見せた部分も少なくないので、特に、他の研究領域とのより具体的な接点も見えてきたので、その方面のリサーチや共同研究への準備段階にもしたい。
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Causes of Carryover |
勤務校の定年の年で、残務整理のため、予定通りの使用ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新しい勤務校での初年度は、公務も少なく、昨年度予定していた計画も含めて、十分実行する予定である。
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Research Products
(5 results)