2015 Fiscal Year Research-status Report
英語における目的語移動と左周縁部に関する通時的研究
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26370561
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 智之 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (20241739)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 目的語移動 / 左周縁部 / 肯定目的語 / 数量目的語 / 統語地図作成法 / 目的語転移 / かき混ぜ |
Outline of Annual Research Achievements |
初期英語に見られる「目的語・動詞」語順における目的語移動の分布について、前年度に行った調査結果を踏まえ、統語地図作成法に基づく分析を提案した。現代ゲルマン語のかき混ぜと目的語転移に関する先行分析を修正した上で初期英語に拡張し、vP領域の左周縁部に話題と焦点に関する機能範疇、それぞれTop(ic)とFoc(us)が存在し、TPとvPの間にTopP-FocP-TopPの順で階層構造を成していると仮定した。そして、上位のTopPとFocPの間に談話・時間副詞、FocPと下位のTopPの間に動詞句副詞をそれぞれ位置づけた。 前年度の調査において副詞に先行する肯定目的語が定名詞句である割合が高いことが分かったが、この事実は肯定目的語の移動がvP領域における話題化、すなわちTopP指定部への移動であることを示す。上記のvP領域の統語構造において、肯定目的語が上位のTopP指定部に移動すれば談話・時間副詞に先行し、下位のTopP指定部に移動すれば動詞句副詞に先行することになるが、これは前年度に行った肯定目的語の分布に関する調査結果と合致するとともに、2種類の副詞を含む文において、肯定目的語が2種類の副詞に先行する例、および2種類の副詞の間に現れる例のどちらも観察されることから支持される。 一方、数量目的語は基本的に不定表現であるため話題化が適用されないが、焦点要素としてFocP指定部に移動すると分析される。この分析により、数量目的語が動詞句副詞に先行するが、談話・時間副詞に先行しないという、前年度に行った数量目的語の分布に関する調査結果が説明される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に行った「目的語・動詞」語順における目的語移動の分布に関する調査結果について、統語地図作成法に基づく提案することができた。肯定目的語と数量目的語に異なる移動先と移動の動機を設定することにより、2種類の目的語移動が辿った異なる歴史的発達を説明する手掛かりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
統語地図作成法に基づくvP領域の統語構造に基づき、基底語順の変化や数量表現を含む他の構文に注目し、肯定目的語と数量目的語の移動の消失について説明を試みる。一方、「動詞・目的語」語順における目的語移動の研究にあまり時間を割くことができていないが、先行研究において手薄となっている古英語と中英語の資料調査を行うことを考えている。
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Research Products
(2 results)