2014 Fiscal Year Research-status Report
中英語と初期近代英語の連続性に関する研究―コーパス言語学と歴史社会言語学の融合
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26370562
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コーパス / 英語学 / 歴史社会言語学 / 中英語 / 初期近代英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、すでにパイロット版の作成を終えているコーパス、EMEPES (Early Modern English Prose Selections), ver. 1を利用して、初期近代英語期における動詞の不定詞構文について言語研究を行い、その成果をInternational Conference on English Historical Lingusitics(KU・ルーヴェン大学、2014年7月)において発表した。発表では特に使役動詞、中でも使役のmakeに重点をおき、その構文の揺れについて、1500年から1700年までの変化をたどった。調査研究の結果、中英語に見られるようなto不定詞構文と原形不定詞構文の揺れは、初期近代英語期にも引き継がれており、使役動詞の史的変化を明らかにするためには、初期近代英語期についてのさらなる調査が必要であることが明らかになった。特に16世紀は、構文の揺れが顕著であり、本研究課題の主要なテーマである中英語期から初期近代英語期にかけての接続部分は、動詞の構文の発達においても興味深い時期であることが再確認できた。 上記の他にも、2014年度は、新たなコーパスの構築に取り組んだ。Early English Books Online等のデータベースを用いて、現在、中英語および初期近代英語のさらなるコーパスの構築を進めているところである。また、すでにパイロット版の作成が終わっているEMEPSについても、コーパスに含まれる一部のテキストの差し替えが必要であるなど、コーパスの具体的な利用の中から改善の余地があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展しているということができる。すでにパイロット版のコーパスEMEPS, ver. 1を利用して、初期近代英語期の動詞の構文の発達を明らかにするなど、一定の研究成果を得ることができている。また、その中から、中英語と初期近代英語を接続する時期が英語史研究全般にとって重要な意味を持っていることも明らかになってきた。さらに、オンラインデータベースを利用しての新たなコーパスの構築についても、全体のプランが整いつつある。 一方で、パイロット版のコーパスを利用する過程で、その問題点も明らかになってきているので、今後はこれらの問題を解決しながら、コーパスの構築と言語研究を進めていく必要がある。2015年度以降の研究計画においては、問題の解決にも一定の時間を要することを考慮に入れる必要があろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度以降は、まずパイロット版のコーパス、EMEPS, ver. 1の問題点を解決し、改善後のコーパスを利用して、さらに初期近代英語の言語研究を進めていく予定である。動詞の構文の変化は、本研究課題が当初より取り組んでいるテーマであるが、動詞と密接なかかわりを持っている副詞の振る舞い等にも視野を広げながら、さらに言語研究を進めていく。 また2014年度には、EMEPSの他にも、オンラインデータベースを利用しての新たなコーパスの構築に着手したので、これをできるだけ早い時期に、少なくともパイロット版として利用できるように整えていくことにも時間をかけたいと考えている。オンラインデータベースとして主に利用しているEarly English Books Onlineは、主に1500年以降の資料を集積したものであるが、一部に中英語の文献も含まれているので、中英語と初期近代英語の両方を視野に入れながら、データの整備を進めていく予定である。2015年度の終わり、または2016年度の前半あたりに、新たなコーパスを利用した言語研究を発展させることができれば、中英語と初期近代英語の接続時期について、さらに議論を深めることができるものと予測できる。
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Causes of Carryover |
物品として、中英語・初期近代英語関連の洋書を購入する際に、為替レートの変動を完全に予測することが困難であったために、購入のための費用が当初予想していた金額を下回ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に購入しきれなかった中英語・初期近代英語関連図書の購入により12511円の残額を使い切る予定である。
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Research Products
(1 results)