2015 Fiscal Year Research-status Report
中英語と初期近代英語の連続性に関する研究―コーパス言語学と歴史社会言語学の融合
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26370562
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中英語 / 初期近代英語 / コーパス言語学 / 歴史社会言語学 / 英語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、中英語と初期近代英語の接続部分に焦点を当てるために、いくつかの方向からのアプローチを試みた。一つは、中英語側からのアプローチである。初期近代英語期の印刷本のデータベースであるEarly English Books Onlineを利用して、個人研究目的のコーパスとして言語データを集積する試みは前年度より続けているが、2015年度は特に中英語の印刷本を中心にデータ整備を行った。さらに、そのデータをもとに、副詞的属格の拡大との関係で以前より関心をもっているalgates, alwaysの語彙選択および語形についての分析を行った。 もう一方のアプローチは、近現代英語方向からのアプローチ、すなわち新しい時代からさかのぼる形で当該の時代の英語を明らかにする方法である。中英語期から初期近代英語期にかけての変化の多くは、現代英語においても変動という形でその姿を現していることが多い。そこで、現代英語も視野に入れながら、現代英語を英語史全般との関係で論じる試みを行った。2015年度に特に力を入れたのは、現代英語の動詞の構文の変動であり、forbidについての2つの研究成果は、それぞれ2015年11月に関西外国語大学で開催された学会、2016年1月にハワイ大学で開催された国際学会において報告した。現在forbidは、to不定詞を取る構文から動名詞の-ingを取る構文に急速に変化しつつあるが、その萌芽は、中英語期から初期近代英語期にすでに観察できるものである。観察する時代の幅を広げることで、中英語から初期近代英語への接続点の英語の実態を明らかにするとともに、その現代的な意味を明らかにすることが出来た。なお、forbidの研究はこれまでにも続けてきたが、2015年度は、ジャンルと言語変化の関係について議論の幅を広げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展しているといってよい。前年度までにパイロット版が完成していたEarly Modern English Prose Selectionsについては、一部の変更を行って、更に研究目的に合致したものに完成しつつある。また、2015年度においては、同様に中英語の印刷本についても、テキストの集積を進め、ケーススタディとして、algates, alwaysについての分析を行うことが出来た。その過程で、印刷本が成立する際に写本のテキストがどのような役割を果たしてきたか等、今後の研究の発展にもつながる知見を得ることもできた。 また、中英語と初期近代英語の接続点の英語を明らかにしていくために、現代英語側からのアプローチも開始することが出来たので、今後、中英語側と現代英語側の両方から本研究課題が中心的に扱う時代を観察するための基盤が出来上がりつつあるといってもよい。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたように、研究を深めるためのテキストの集積作業は、かなり進んできているが、今後もこの作業は継続が必要である。Early Modern English Prose Selectionsについては、いくつかのパイロットスタディを行う課程で改訂をおこない、かなり研究目的に合致したものになってきている。一方、中英語印刷本テキストについては、ようやくalgates, alwaysの分析を行ったところであるので、さらに異なる言語現象についての分析を進めながら、構築されたコーパスの修正が必要と思われる場合には、その整備を進めていく予定である。また、初期近代英語についても、Early Modern English Prose Selectionsのような汎用性が高いコーパスの他に、個人言語に焦点を当てた資料の集積が必要であると感じているので、今後はこの方面にも力を入れていきたい。社会言語学的な分析には、言語使用者の特性という視点は不可欠だからである。 具体的な言語分析に当たっては、動詞の構文のような長い時間をかけて変化する現象、スペリングのように比較的短時間での変化が観察できる現象など、複数のものを組み合わせて分析を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
中英語・初期近代英語関連図書を購入する際に、為替レートの変動を完全に予測することが困難であったため、図書購入の費用が注文計画時に予想していた金額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度に購入を予定し、購入に至らなかった図書の購入費用として、残額を使い切る予定である。
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