2016 Fiscal Year Research-status Report
中英語と初期近代英語の連続性に関する研究―コーパス言語学と歴史社会言語学の融合
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26370562
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
家入 葉子 京都大学, 文学研究科, 教授 (20264830)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中英語 / 初期近代英語 / コーパス言語学 / 歴史社会言語学 / 英語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、昨年度までの研究成果を踏まえながら、引き続き、中英語と初期近代英語の接続部分に焦点をあてた研究を行った。昨年度は、中英語についてはEarly English Books Onlineを利用した電子コーパスの作成を中心に行ったが、2016年度は、Early English Books Online以外についても、まだ電子化が進んでいない写本の調査に着手した。ただしこちらの研究成果があらわれるのには、若干の時間がかかりそうである。 一方、初期近代英語については、一般公開されているArcher Corpusを利用し、これまで研究を続けてきた否定構文と助動詞doの発達を扱い、現在多くの研究者が取り組んでいるJespersen's Cycleについての考察も行った。その研究成果は、2016年11月に金沢大学で開催された日本英語学会第34回大会のシンポジウムで報告した。 また2016年度は、これらの中英語から初期近代英語にかけての言語変化を、英語史全般においてどのように位置づけることができるかについても考察を行った。2016年6月に関西言語学会で行った歴史社会言語学についての研究報告はその一つである。英語史研究が社会という概念を取り込みながら近年新たな展開を見せている背景として、コーパス言語学の進展がある。一方で、コーパスを含む研究方法の開拓の結果として、英語史研究の成果と現代英語研究の成果が相互に関連しながら連続性をもつようになってきた。本研究が取り組む中英語から初期近代英語の連続性は、その多くが現代英語にも波及するものであり、実際に、昨年から継続的に調査をしている動詞forbidの現代英語語法は、中英語期、初期近代英語期の言語変化との関連性なくして十分に説明することは難しい。2016年度は、このような視点からも研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中英語、初期近代英語の両方について、一般公開されているコーパスの利用、本研究のためのコーパスの作成など、研究対象を確実に広げながら研究を展開することができている。また、英語史全般という広い視野に立って、中英語から初期近代英語の変化に焦点を当てることが可能になってきている点でも、研究は発展的に進んでいると感じる。特に歴史社会言語学のような研究のフレームワークについても考察を進めてきたことで、同じ資料を扱う場合でも、そのアプローチの幅が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、調査対象とする文献(およびその集積によって構築されたコーパス)の面でも、分析、考察においても研究は確実に展開してきているが、2017年度は、本研究の最終年度に当たるので、一定のまとめが必要であろう。本研究のために構築したコーパスの利用では、パイロット的な分析から、より本格的な言語分析に重点を移していく。写本の調査は着手したばかりであるので、2017年度中に調査資料としての体裁を整えるところまで作業を進めるのは難しいと感じるが、可能なところから言語分析を試みると同時に、電子化の作業を継続する。 現代英語を含む英語史全般における中英語、初期近代英語の位置づけについても、2016年度に引き続き議論を行い、中英語と初期近代英語の連続性に焦点を当てることによって明らかになる言語変化のメカニズムを、より広い英語史の視点から考える。2016年度に歴史社会言語学のフレームワークについての議論を行ったが、2017年度は言語分析により、そのフレームワークを具体化していく。
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Causes of Carryover |
中英語・初期近代英語関連図書を購入する際に、為替レートの変動を完全に予測することが困難であったため、図書購入額が購入計画時に予定していた金額を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に購入を予定しながら購入に至らなかった図書の費用として、残額を使い切る予定である。
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Research Products
(5 results)