2015 Fiscal Year Research-status Report
主観的事態把握と対人関係的機能の発達に関する多言語研究
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26370564
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00263179)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構文化 / 対人関係機能 / 懸垂分詞 / 意味変化 / 構文ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は懸垂分詞表現の対人関係化に関するデータを広げ、その生起条件について詳細な検討を重ねた結果を2カ所の学会で発表を行い、論文を3本執筆した。 扱ったデータは具体的にはGrantedとSpeaking (of which)である。Grantedについては過去分詞形から接続表現、そしてそこから単独でモダリティマーカーに変化するプロセスとその要因についてまとめ、成果を国際認知言語学会(イギリス)で発表し、フロアから好意的な反応とさらなる改良の余地についての指摘を受けることができた。また発表に先立ちこの内容を『日英語の文法化と構文化』(ひつじ書房)への寄稿論文として執筆、秋に刊行した。また懸垂分詞としてSpeaking が用いられる状況の言語的条件について検討を行い、speaking に後続する表現として許されるのが、主節にある発話内容と何らかの形で関わりのある要素のみであることを確認した。主語不一致の懸垂分詞構文と通常の分詞構文との間の線引きとなる条件を洗い出したことになる。この結果については日本英語学会のシンポジウム『構文変化と談話・情報構造-データと理論の融合を目指して』の招聘講師として発表し、学内プロジェクトに執筆を終了したところである。 また、対照言語学的側面についても成果をあげることができた。フランス語学の渡邊淳也氏(筑波大学准教授)と英仏対照の共同研究をすすめており、その成果を『時制並びにその関連領域と認知のメカニズム』に共同執筆した論文を掲載することができた。英語とフランス語での懸垂分詞相当表現の分布とその意味変化傾向の間に乖離が見られることを指摘し、その理由の一つに認知モードに基づく自然な事態把握の差が関わっている可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討する言語現象をさらに増やすことができたのと、懸垂分詞構文と分詞構文とを分かつ条件を言語的側面からさぐるという新たな視点を用いての検討ができた。このことは複数の懸垂分詞事例にまたがって適用される条件への布石となる。また対照言語学的分析についてもフランス語との比較において一定の成果を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
構文化という概念がどこまでこの現象に適用されるか、されるとすればどのような条件になるか、といった、複数の事例にまたがる制約を意味形式の両面から探っていく。そして、構文化ネットワークをどのように形成するとする仮説が立てられるかを検討し、データからそれをサポートする作業を進めていきたい。 また、渡邊淳也氏(筑波大学准教授1000020349210)に連携協力者となっていただいての研究も引き続き行っていく。これに関連して筑波大学の和田尚明氏、渡邊淳也氏の主催するTAMEリサーチグループという研究組織にも属し、時制、アスペクト、モダリティおよびミラティビティといったテーマについて協働して行く予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していた海外発表がとりやめになったことと、2年目に計画していた英語論文執筆の校閲料に当てていたものが、執筆期間の延長により翌年度に延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英語論文校閲料に当てるのと、論文集の編集というプロジェクトが立ち上がっているので、その関連費用に充てたい。
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Research Products
(5 results)