2016 Fiscal Year Research-status Report
主観的事態把握と対人関係的機能の発達に関する多言語研究
Project/Area Number |
26370564
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (00263179)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 懸垂分詞 / 談話標識 / 意味変化 / 話題転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は英語懸垂分詞Speakingの共起可能要素について、コーパス資料を用いて探った。その結果、主節における発話内容を何らかの形で修飾したり特定化したりする要素であれば、懸垂分詞として「適格に」機能できるとわかった。特にSpeaking of whichという特定の表現の意味の多様性と変化のプロセスを確認し、話題マーカーから話題転換の際に使われるマーカーとして機能をシフトさせていることを明らかにした。 さらに、そのほかの懸垂分詞との共通性を考察する中で、多くの事例が話題転換へと談話上の使用意味を変化させていることがわかった。具体的には、Speaking of whichはTalking of whichなどとともに、会話冒頭にて話題をシフトさせる役割を発達させるのに対し、GrantedやHaving said thatなどの表現は、いったん相手の言ったことを認めてそれに譲歩する形で自分の意見を述べる、という機能から、相手の言う内容をいったんは受け入れておきながら、全く違う方向へと話題を変化させる、という機能へと、一律に変化をしている。道筋は異なるものの、いずれも話題転換にまつわるマーカーになっていくことを、構文化という考え方と絡めて説明付けようと試みた。 本研究の内容の一部は、6月のOsaka Workshop on Usage-Based Modelにて、また7月の第5回英国認知言語学会(UK-CLA 5)にて発表した。更に、科研費支出とは直接関係しないが、科研費で得られた内容の一部を7月には広島大学で、10月には関西大学で、2月には奈良女子大学で、3月には第5回動的語用論研究会にて、それぞれ招待講演を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
懸垂分詞が談話標識化していると思われる事例について、大枠的に検討を加えることができているため。また、研究発表や講演も数多く行い、意見を交換することができ、研究の進展について充実したフィードバックをもらっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は計画の最終年度に当たるため、4年間の総括として懸垂分詞全体の構文化の方向性と談話上の機能とのかかわりについて、まとめて発展させる議論をしたい。特に、他の言語における発話動詞由来の意味変化との類似性と相違点についても考察を行い、構文化という概念の妥当性と限界を見極めたい。更には、計画年度終了の暁には研究成果をまとめて書籍化できるような形を考えている。
|
Causes of Carryover |
当初予定していたワークショップ開催が、参加者の関係で延期、かつ形態をかえて書籍化することで実現させる方向に変更されたため。また、もう一つ予定していた海外での学会発表が実現しなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度では当初予定に入れていなかった海外学会での発表(内定している)の旅費と、これまでの研究成果をまとめて投稿する予定の論文の投稿先および種類が増えたため、その英文校閲に充てたい。
|
Research Products
(4 results)