2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370567
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
西山 淳子 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (90469130)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 時の副詞 / 完了形 / 情報構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語の時の副詞句の出現状況と完了形の解釈の相関関係は、従来、完了形の構造的多義性の根拠であるとされてきたが、本研究では、現代英語のコーパスを利用し、その相関関係を検証し、その結果を完了形文の構造的多義性に依拠することなく、新たに情報構造から捉え直し、形式意味論・語用論で分析することを狙いとしている。 平成28年度は、完了形についてのコーパスデータ分析を終え、前年度に引き続き、文頭の時の副詞句の意味・機能を明らかにするために、完了形以外の相・時制の文の解釈に副詞の位置が与える影響を、とりわけ、文頭で談話標識の機能を持つ現在を表す時の副詞句を取り上げ、コーパスを利用して調査した。英語の現在の時を表すnowは、現在時制では直示表現として発話時間を示し、過去時制の物語文では物語時間軸の参照時間(基準時間)を示し、文頭では、共起する事象の種類に関わらず、物語時間を更新し、談話では、談話標識として主題の転換や不連続性など示すが、本研究では、文頭で現れる現在の時の副詞を領域設定子(Jacobs 2001)と捉え、その領域設定子の持つ対照主題性(Krifka 2008, Hinterwimmer 2011)から、これらの現在時制、過去時制の物語文、談話の時の解釈が説明できることを明らかにした。このように、完了形に関わらず、統語論的・意味論的多義性に依拠することなく、時の副詞の位置によって異なる解釈を導く仕組みは情報構造により説明可能であることを示した。最終年度は、本分析を完了形に当てはめ、本課題の狙いである副詞と共起する完了形の多義性によらない情報構造に基づく分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、複数の異なる時の副詞句の出現位置と完了形の意味解釈との関係を扱う予定であったが、初年度の結果を踏まえ、前年度の27年度、対象とする副詞句を現在の時の副詞に絞り、特定の時制・相に依存しない機能を明らかにするために、完了形以外の文に対象を広げ、その解釈との関係を調査した。28年度はその結果についての論文執筆を優先したため、当初予定した、完了形文の解釈と副詞の出現位置についての成果をまとめることにやや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に得られた分析を、完了形と時の副詞句の解釈の関係に当てはめ、情報構造に基づく分析を行い、その結果をまとめ、論文・学会への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度の分析の結果を踏まえ、平成27年度に調査分析の対象を調整・変更したため、平成28年度の成果発表が遅れ、学会発表や論文執筆に関わる費用を次年度に使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会旅費や論文執筆に必要な物品や校正に使用する予定である。
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