2016 Fiscal Year Research-status Report
英語主語位置の通時的推移に関する情報構造論的研究:談話階層言語から命題階層言語へ
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26370568
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 島根大学, 教育学部, 教授 (00325036)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生成文法 / 統語論 / 英語史 / 言語変化 / 情報構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,英語史における主語位置の通時的・共時的変異に対して情報構造がどのように関与したかを明らかにすることである。当初の計画で最終年度にあたる28年度は,本研究の主題とそれに関連する現象について,以下の成果を報告した。 「英語主語位置の通時的下方推移分析」(『コーパスから分かる言語変化・変異と言語理論』所収)では,英語主語位置の通時的変遷を3つの時期に分けて分析した。提案した分析によれば第I期は古英語から初期中英語であり,この時期には主語はTopP指定部またはFinP指定部を占めていた。これら2つの主語位置は異なる情報構造上の役割を担っており,前者が旧情報を表す代名詞主語および定名詞句主語によって,後者が新情報を表す不定名詞句によって,それぞれ占められていた。また第II期は後期中英語から初期近代英語であり,この時期には主語はFinP指定部またはTP指定部を占めていた。第I期と異なり,これら2つの主語位置は機能的に等価であり,主語の情報構造上の役割とは無関係に任意に使い分けられていた。最後に第III期は後期近代英語以降であり,主語位置はTP指定部に統一された。 英語主語位置の通時的推移は動詞移動の消失と期を一にして進行したが,後期近代ではknow, believe, care, doubtなど一部の動詞が動詞移動の消失に抵抗し,否定文においてnotの前に置かれることがしばしばあった。この問題について扱ったのが「I know not why―後期近代英語における残留動詞移動―」(『文法変化と言語理論』所収)である。この論文では動詞移動の駆動因として動詞屈折接辞と否定接辞の2種類を仮定し,後期近代英語以降,否定接辞によって駆動される動詞移動が「二重詰めNegPフィルター」の違反を生じさせ,これを回避するために音韻部門でのNeg-to-T移動が適用された,と論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において,28年度は主語位置の変遷が同時期に観察される他の統語変化にどのような影響を与えたかを理論的に解明するとともに,英語が談話階層型言語から主語卓立型言語へと変化した過程を明らかにする時期として位置づけられていた。これらに関係する統語変化のモデルを提示し,論文として発表できたことから,本研究は全体として「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終年度である2018年に,英語の史的コーパスPenn Parsed Corpus of Modern British Englishの第2版(PPCMBE2)が米国ペンシルバニア大学より公表された。このコーパスの扱う資料の範囲が,本研究が対象とする時代と重なるため,研究事業期間を1年延長し,本研究から得られた結論の妥当性をあらためてPPCMBE2を用いて検証する。
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Causes of Carryover |
本研究の最終年度である2018年に英語の史的コーパスPenn Parsed Corpus of Modern British English の第2版(PPCMBE2) が公表され,本研究の妥当性をこのコーパスを用いてあらためて検証する必要が生じた。そこで,研究費を計画的に使用して研究事業期間を1年延長することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述したPPCMBE2を用いた検証作業に必要な図書費,および研究成果公開のための旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)