2016 Fiscal Year Research-status Report
日英語の語彙的アスペクト ―意味の合成性とスケール理論―
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26370572
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
磯野 達也 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (10368673)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 語彙意味論 / 事象構造 / スケール構造 / 語彙的アスペクト / 動詞と名詞 / しよる / しとる / モダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、語彙概念構造や生成語彙論で得られた成果とスケール理論を組み合わせることによって、語彙的アスペクトがどのように現れ、アスペクトの揺れがどのように生まれるかを、日英語を主な対象として明らかにすることを目指している。 これまでは、動詞が表す「移動・状態変化・状態」のそれぞれの意味分析とこれらと「時間」との関係を分析し、加えて名詞句と動詞との意味的相互作用を分析して、一見、語用論的知識と思える意味も、生成語彙論とスケール構造を組み合わせることで、アスペクトの揺れを説明することができることを示してきた。 英語の進行形と日本語の「している」の意味用法の違いを、スケール構造を取り込んだ意味表示で表すことを提案し、平成28年度は「している」の用法をさらに詳細に捉えるために、西日本で用いられる「しよる・しとる」の使用について、何人かの話者に直接、聴き取りを行った。 大きく分けると、「しよる」は状態変化前の出来事を、「しとる」は状態変化語の出来事を表すということが知られている。また、「しよる」は〈まさに起ころうとしている〉ことを表す用法があることが指摘されている。平成28年度は様々なアスペクトを持つ動詞との組合せで「しよる/しとる」の用法を調査し、「している」、英語進行形との類似点・相違点を意味表示を用いて説明した。今回の調査では、話者の心的態度を表わしている用法が見られ、この用法についての確認と検討が今後必要である。「ひろしが走りよる/走っとる」の使い分けについては、使用する場面で若干の区別があると指摘する話者もおり、既に主張されている「しよる」の〈目の前性〉との関連を確かめる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
西日本方言話者からの情報収集に手間取ったため、その分析と事後調査が遅れている。このため、西日本方言の検証のための事後調査と日英語以外の言語についての調査を平成29年度に延期した。 日英語以外の言語のアスペクト調査は中国語を予定しており、日本在住の中国語話者からの聴き取りを行うことで、研究の遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の概要でも述べたように、活動動詞と用いるときの「しよる/しとる」の使い分けと目の前性の関係、「しよる」とモダリティの関係についてさらなる考察が必要である。今年度は、これらと中国語のアスペクトの揺れの3点に研究の対象を絞ることで、研究を円滑に進め、アスペクトと動詞・名詞句・語用論的知識の関係を意味表示の観点から明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
本務校での業務との兼ね合い、西日本方言の聴き取り対象者確定と日程の調整などで、当初の計画より遅れが生じ、実地調査とその後の分析が遅れ、結果として次年度使用額が生じた。 西日本方言についての聴き取り対象者が確定していること、考察対象を絞り込むことで調査と検証を円滑に進める予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度行った調査に基づく仮定を検証するために実地の調査を今年度、早期に行う予定である。他言語については、文献調査を行うことにしており、文献の収集に使用する。
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Research Products
(1 results)