2016 Fiscal Year Research-status Report
ウェールズ英語とスコットランド英語における反方言化の進行とアイルランド語の影響
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26370574
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
三浦 弘 専修大学, 文学部, 教授 (00239188)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 音声・音韻 / 英語方言 / 母音 / 子音 / ウェールズ / コーンウォール / アイルランド / R音化母音 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は8月から9月にかけて英国コーンウォール地方の4町村にて英語方言の調査を行った。コーンウォール地方では1770年代まで、アイルランド語やウェールズ語やスコットランド・ゲーリック語と同様のケルト系言語であるコーンウォール語が話されていたため、本研究課題をより深めるために追加のデータ収集を目的として調査した。 調査方法も改善し、適切な被験者を募集するために、「王立英国在郷軍人会」(RBL, the Royal British Legion)のコーンウォール地区本部の福利厚生課に協力を依頼し、4支部(ルー、トゥルロー、ヒームア、マウズル)にて被験者の提供を受けた。 コーンウォール地方で収録したデータは、まず母音についての分析を行い、さらに、平成26年度に収録したウェールズ地方のデータと比較し、ウェールズ英語の特徴とされている特殊な二重母音の音素対立が、南西部のコーンウォール英語にも一部生じていることが発見できた。 平成27年度に収録したアイルランド各地の音声分析も進展した。アイルランド英語は、アメリカ英語の標準発音のように、R音変種と呼ばれる、音節末の /r/ を発音するタイプの英語であるが、/r/ の前に来る母音によって、/r/ の発音が開始される時間が早まる度合い(先行母音とかぶさる度合い)が異なり、その母音グループの分布状況が地域によって明確に異なる(方言差がある)こともわかり、地域によってアイルランド語の影響に差が見られた。 アイルランド英語の分析では、子音についても興味深い分析結果が出た。ダブリン英語の特徴である slit /t/ と呼ばれる、摩擦音化した/t/ の研究を端緒として、各地の /t/ を比較分析したところ、t と th の発音の異音が、歯音化した /t/、無解放の /t/、破擦音化した /t/ 等々、その分布状況が把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者の長期海外渡航に伴い、1年間の期間延長をしたが、平成28年度後半から遅れた分析の追い上げを行い、複数のテーマの分析が進み、テーマごとに新たな知見が見いだされている。 ケルト系諸語(アイルランド語)の影響を受けた英語諸方言には、母音、子音等の分節音においては、音素の対立や特徴的な異音という形で、その影響が見られる。その分布状況の把握が本研究の目的であるので、おおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
年に一回、研究フィールドの英語方言収録に出かけることができて、貴重なデータを入手している。これらのデータは研究にとっては宝庫と言える。 あらかじめ目的とするデータが取れるような語彙リストを作成したり、後に応用が効くようなさまざまな準備を行ってから臨んでいるが、一通りの分析が終了した後に、新たな視点からテーマを見つけて再分析を行うと、必ず新しい知見が発見できるような感触を得ている。 期間延長が認められたので、もう1年、この3年間に収録したデータからできる限り多くの新発見ができるようにデータ分析に励む所存である。
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Causes of Carryover |
備考欄に表示されているように、期間延長が承認された。研究協力者の大学院生の海外留学に伴い、アルバイト謝金に残金が出たためである。その人件費を平成29年度に使用して、さらにデータ分析を発展させる予定です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、次年度使用額は、平成28年度までに収録したデータ分析のための学生アルバイト謝金として使用する予定である。新しい視点からデータのグループ分けをしたり、手法を変えながら、新たな知見を導き出したいと考えている。平成29年度の秋までには終了させる予定である。
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Research Products
(9 results)