2014 Fiscal Year Research-status Report
近代英語における言語変化の内的・外的要因 ― 現代英語へとつながる動態の研究
Project/Area Number |
26370575
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
堀田 隆一 中央大学, 文学部, 教授 (30440267)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 近代英語 / 語彙拡散 / 借用語 / 言語変化 / 英語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1) re'cord (n.) vs reco'rd (v.) のような「名前動後」の発生と拡大, (2) 動詞直説法3人称複数現在の -s の発生と衰退、(3) ラテン語彙の大量借用及びそれに対する反動、に関する3つの課題からなる。 2014年度の実績は、(1) については、日本英文学会第86回大会(2014年5月24日)で「英語史における言語変化のスケジュール」シンポジアムのなかの一発表として「初期近代英語以降の名前動後の拡大とS字曲線」と題する研究成果を口頭発表し、その概要は同学会のプロシーディングズにも掲載された。また、関連論文が国際英語史学会のプロシーディングズに掲載が決定しており、研究の進捗状況は順調である。 (2) については、研究成果を大東文化大学大学院英文専攻特別講義(2015年3月6日)として「英語史の問題としての三単現の -s」を口頭発表し、これを発展させた論文が2015~2016年度中に出版される予定である。 (3) については、本年度は研究成果を公表するに至っていないが、初期近代英語期の語彙借用を巡る状況と比較すべき2つの関連課題に取り組むことにより、次年度以降の研究への足がかりを作った。具体的には、現代日本語の借用語彙の問題について「和製英語の自然さ・不自然さ」(宋協毅・林東常(編) 『日本語言文化研究』第5輯、大連理工大学出版社、2014年。460--64頁)が出版されたほか、初期近代英語期の借用語彙の綴字問題に関して日本中世英語英文学会第30回全国大会(2014年12月6日)にて、"Etymological Respellings on the Eve of Spelling Standardisation" と題する英語口頭発表をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の3つの課題に関して、(1) 「名前動後」と (2) 「3単現の -s」の2つの研究について、進捗状況は良好である。(1) は、これまでの研究成果が口頭発表や論文公刊という形で着実に公表されている。 (2) についても、関連する初期近代英語期における3復現の -s との比較において研究を順調に進めており、2014年度の後半には研究成果の一部を発表できる状態に至った。次年度以降の研究への足がかりをつかむことができたと考える。 (3) の課題は「ラテン語彙の大量借用及びそれに対する反動」だが、この課題の達成度は直接的には高くない。しかし、本課題は、もとより比較される現代日本語の語彙借用状況や、初期近代英語期の語彙を取り巻く諸事項(語の強勢位置の変化を含む)との関係において研究するという計画で始めたものであり、後者の関連する諸事項については2014年度は着実に研究を進めることができた。いわば外堀を埋めつつある状況といえる。(3) の課題も、当初の計画に照らせば、全体として順調に進んでいると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の3つの課題、(1) 名前動後、 (2) 3単現の -s、(3) ラテン語彙の大量借用及びそれに対する反動について、今後の推進方策を記す。 (1) については、すでに研究の蓄積が豊富にあるので、この問題に新たな角度から迫る必要があると考える。具体的には、音節構造に関する理論を参照する、語の頻度との関係から名前動後化の現象を記述する、などの方法を試す予定である。 (2) の課題については、コーパスを利用して、初期近代英語の直説法現在の動詞屈折について、3単現に限らず3復現その他の屈折形をも考慮しながら、量的・質的に記述してゆく。また、先立つ後期中英語と後続する後期近代英語の状況とをコーパスを用いて比較し、動詞屈折の通時的な変化を明らかにする予定である。この目的のために、既存のコーパスのみならず、独自のコーパスの編纂や開発をも目指したい。 (3) については、初期近代英語におけるラテン語彙借用の実態について、OED を中心とした歴史辞書と EEBO を含む同時代のテキストを含む電子コーパスを参照しながら、量的・質的に明らかにする。この課題は間接的に (1) にも関わるため、2つを連動させて研究を進めてゆく予定である。
|
Causes of Carryover |
少額の調整費用が残ったにすぎず,予算計画に反するような特別な理由はない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由であり、次年度の予算計画の通りに使用を計画する。
|