2016 Fiscal Year Research-status Report
近代英語における言語変化の内的・外的要因 ― 現代英語へとつながる動態の研究
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26370575
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀田 隆一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (30440267)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 英語史 / 近代英語 / 中英語 / 現代英語 / 歴史言語学 / コーパス / 言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、現代英語の深い理解に資するべく近代英語の動態について様々な角度から調査することである。当初の計画では、取り上げる問題として (1) 名前動後、(2) 3単現の -s、(3) ラテン語彙の借用、の3点を掲げた。 (1) の課題については過年度に十分に取り扱い、実績も示したので、当該年度はとりわけ (2) の課題に集中した。(2) の3単現の -s を巡る英語史上の問題については、古英語から中英語、近代英語を経て現代英語に至る同語尾の音韻形態的変化を明らかにし、特に英語の標準化の進む近代英語期以降に関しては、その語尾の社会言語学的な含意をも考察した。その成果は、共著になる『これからの英語教育』において論文として掲載された。また、同じ議論を簡略に要約したものは、単著になる『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』に取り込んだ。いずれも学術的な論考が元になっているが、英語教育の観点を意識しながら執筆しているので、研究・教育の両方に資する実績となったと自ら評価している。 (3) のラテン語彙の借用課題に関しては、当該年度は予備的な調査を開始したにとどまる。しかし、16世紀の借用語彙とその綴字を分析した論考について国際英語史学会にて発表する機会を持ち、次年度以降に本格的な調査を進めていく上で大きな刺激となった。 全体として、(1), (2), (3) の各課題を学術的に研究し、その成果を公表しながら、同時に教育にも資する実績、特に教養書の単著出版につながった点を強調したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、(1) 名前動後、(2) 3単現の -s、(3) ラテン語彙の借用、の3つの問題を同時並行的に進めるという計画で開始した。研究実績の概要にも記したが、実際に研究を行なうにあたっては、厳密に3つを並行的に進めるというよりは、各年度で特に集中的に取り扱う課題を選んで、研究を進めるという方法へ変化してきている。当該年度では主として (2) に注目して研究を進め、満足のゆく完成度をもって、出版及び学会を通じて公表する機会をもつことができた。次年度からは、研究の重点を (3) へ移し、本研究課題全体の完成へと近づいていく予定である。なお、(1) についてはすでに過年度に業績を積み重ねている。 上記のように、当初の計画の進め方こそ多少変わってきたものの、現在までの進捗状況はおおむね順調ということができる。当該年度の研究成果公表の機会は望むほど多くはなく、若干の反省材料となっているため「おおむね順調」と自己評価したが、次年度に公表が予定されているものもいくつかあり、当該年度の研究の成果は確実に見込むことができる。また、研究課題に関連するウェブ上のリソースを多く増やしたことにも言及しておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで計画を順調に進めて来られたので、次年度以降も同様のエフォートで進めていく。研究課題と関連するデータベースの構築・公開や教養書の執筆・出版により、本研究課題をさらに推し進めていく。 特に次年度以降は、ラテン語彙の借用に関する研究に注力していく予定だが、16世紀を中心とする英語の語彙借用熱の問題と、近現代の日本語の語彙借用熱の問題(いわゆる「カタカナ語の氾濫」)との類似点・相違点に、社会言語学的な観点から注目していく。語彙とその綴字に関するデータベースを作成する必要があるが、既存のコーパスやデータベースに部分的に依存しながらも、独自の情報を加えたデータベースを作り上げ、ウェブ上に公開することも視野に入れたい。
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Causes of Carryover |
当該年度末に数冊の図書の購入を予定していたが、在庫の関係で入手に手間取り、次年度に持ち越して購入せざるを得ない状況だったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度末に購入予定だった図書を、新年度に購入する。
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