2017 Fiscal Year Annual Research Report
The metrical intertextuality of the Old English Genesis A and B, and the Old Saxon Genesis
Project/Area Number |
26370582
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
鈴木 誠一 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (90148239)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Genesis A / Genesis B / Old English / Junius 11 / meter / Old Saxon Genesis / Exodus / Daniel |
Outline of Annual Research Achievements |
Junius 11写本では、詩句の区切りがほぼ規則的に記されており、また、節(70~100詩行からなる単位)区分は、そのはじめを装飾文字で示しその終わりを句点で表している。そこで、今年度は昨年度の成果を踏まえて韻律構造と書記構造の対応関係について出エジプト記(Exodus)とダニエル(Daniel)をも含めた、写字生Aが手がけた写本部分(Liber I)全体を探求した。その結果、創世記A、出エジプト記、ダニエルにおいては節冒頭の詩句は弱音部で始まる強い傾向を示すのに対して、創世記Bにはそうした相関性は認められないことが判明した。また、然るべき理由により今まで別々に扱ってきた創世記Aおよび創世記Bは現存写本においては単一作品「創世記」として再編されていることに鑑み両構成部位を一括して捉える統一的観点から韻律構成を再検証した。その結果、創世記B挿入に先行する創世記Aの部分(創世記A1)と挿入後の創世記A(創世記A2)とでは二重頭韻の生起頻度をはじめいくつかの韻律特性が顕著に異なることが明らかとなった。詩句頭余剰音節等も合わせて考慮すると、創世記A1の方が創世記A2に比べて創世記Bとの類似性が高い-すなわち韻律的卓立性が高い-と一般化できるのである。こうした一連の現象を説明するためには、Junius 11写本成立以前の写本製作の系譜を再構成する必要があるが、これは次期科研費プロジェクト(Junius 11古英詩創世記の韻律と挿絵-初期西サクソン版創世記及び西フランク版創世記の再構成)の課題となる。
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