2014 Fiscal Year Research-status Report
対話型アセスメントとPAC分析を援用した児童生徒のバイリンガリズムに関する研究
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26370612
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
吹原 豊 福岡女子大学, 国際文理学部, 講師 (60434403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
助川 泰彦 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70241560)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイリンガリズム / 対話型アセスメント / PAC分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の平成26年度には、本研究の主要なフィールドである茨城県東茨城郡大洗町(以下、大洗町)でのフィールドワークを合計8回実施した。 第一に、本研究の協力者のうち中心的な存在であるA家を毎回訪問し、家庭での言語使用や長男の教科学習等の参与観察を行った。その際には、言語習得や教科学習に関するインドネシア語を用いた聞き取りも実施した。また、A家の長男が通う小学校にも何度か足を運び、授業参観などの行事に参加したほか、校長、クラス担任、日本語教室担当教員からA家の長男の生活面、学習面についての所見を聞き取った。しかし、想定に反して、9月にA家の長男が病気のため入退院を繰り返すことになり、さらに、その後、医療機関でのリハビリを行う必要が生じてからは、フィールド訪問が医療機関や学校、役場における言語面のサポートを中心とするものとなった。A家の長男の支援にあたっては、所属するインドネシア人教会の牧師と連携する機会もあり、牧師を始め、教会役員との信頼関係を従前よりも強固なものにすることができた。 第二に、8月下旬に東京都内において連携研究者の協力のもとにPAC分析の技法確認を行った。 第三に、大洗町のインドネシア人コミュニティの元成員で現在は栃木県に移住した家族のうち、高校生の長男の進路相談、三者面談への同席および通訳、進学先の専門学校の訪問等を行った。それにより、大洗町のインドネシア人児童生徒に対する今後の支援という点で具体的な示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二つの観点からの調査についてそれぞれ個別に進捗状況を述べたのち、その理由について述べることにする。まず、マクロな観点からの調査であるが、JSL児童対象の対話型アセスメントに関しては未実施である。一方、家庭、教会活動などのコミュニティでの活動、学校などでの参与・非参与観察は複数回実施できており、順調であるといえる。また、保護者を含めインドネシア人コミュニティの成員すべてを対象とした、子どもの言語学習や教科学習、将来の進路に対する考え方についてのインドネシア語を用いての聞取りに関しては、ごく一部の家族に対して、限定的に実施できている状態である。 次に、ミクロな観点からの調査である。かつて3世代にわたって同町に居住していた日系インドネシア人家族(A家)の子どもたち2名およびその家族を対象にした参与・非参与観察については複数回実施でき、概ね順調である。一方、家族を対象としたPAC分析に関しては、連携研究者との間で調査手法の確認を行った段階である。 達成度に関して、遅れをきたしている大きな理由としては以下の二つが挙げられる。 1.調査対象者の中でも最大のキーパーソンであるA家の長男が昨年9月に重病に罹り、入退院を繰り返した(現在も医療機関においてリハビリを継続中)こと。 2.共同でPAC分析を用いた調査を行う予定であった連携研究者に所属機関の異動、その他(現在長期休暇中)の事情が重なり、平成26年度後半から27年度前期期間中の研究実施(協力)が困難になっていること。
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Strategy for Future Research Activity |
コミュニティの要を成す家庭であり、PAC分析を用いた調査対象でもあるA家において、その長男が病気により長期の療養が必要になっている。今後は長男の治療・療養をできる範囲で支援しながら、研究計画の修正を図っていく予定である。具体的には、平成27年度前半には家庭における参与観察をA家以外にも広げていく。その際は、まず3~5家族程度を対象に対話型アセスメントに関する予備的な調査を行うとともに、家族やコミュニティ成員を対象とする聞き取りを進めていく。連携研究者が職場に復帰する平成27年度後期からは、A家の長男の快復状態を注意深く見守りながらPAC分析を用いた調査の準備を進めていく。その際には、最悪の場合は調査対象者をA家以外の家族に変更することも検討する。 また、平成27年度中に大学の夏期もしくは春期休暇を利用してインドネシアでの調査を実施する。インドネシアでは日本で長期の生活を経験したのち帰国した家族を訪ね、両親を対象とした聞き取りと子どもを対象とした2言語での対話型アセスメントを行う予定である。 本研究では、研究の最終年度にあたる平成28年度中に関連学会・研究会で複数回の成果発表を行う予定であり、平成27年度後期にはそのための準備も進める。
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Causes of Carryover |
代表者に関しては、主な調査対象者の病気、連携研究者の長期休暇取得などにより研究が当初の計画よりも進まなかったことによる。 分担者に関しては、所属先の異動などの事情により、研究が当初の計画よりも進まなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は当初の計画に沿って予算を使用したい。平成28年度に研究成果の海外での発表を考えており、これまでに生じた繰越金についてはそのために使用したいと考えている。
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Research Products
(2 results)