2014 Fiscal Year Research-status Report
運動領域の活性化に着目した英語語彙習得促進の手法開発と評価
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26370635
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
鈴木 明夫 東洋大学, 経営学部, 准教授 (00406373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟津 俊二 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (00342684)
赤間 啓之 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (60242301)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 英語刺激文の標準化 / 外国語理解の身体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、知覚的記号システム理論にもとづく授業開発アプローチの妥当性検証と、英語教育手法の開発を目的としている。H26年度は、a) 認知実験及び実験を実施するための準備として、日本語文、英語文刺激の標準化を行った。b)外国語文の理解時に、運動領域が活性化するかどうか検討するための行動実験、c)同目的のfMRI実験を行った。 a) 刺激文の標準化は終了し、成果を学術論文2本にまとめた。これは日本語文と英語文の意味を対応させ、文字数、単語数などの客観的指標だけでなく、親密度、理解容易性などの主観指標、さらには意味内容の経験性、心像性も測定したものであり、今度英語教育の研究を進める上で、教材や刺激文の選定に広く応用可能なものと考える。 b)及びc) TOEIC得点が大学生平均を下回る者を対象に行い、日本人英語学習者が刺激文を読解するのに必要な時間の測定を行った。同時に、行為を意味する英語文の理解時に、運動表象が活性化するかどうかを検討した。まだ数名の実験協力者の追加が必要であるが、予備的分析の結果、英語文の理解時にも知覚運動表象が活性化していると言えそう、つまりアプローチの妥当性が検証されそうである。この成果は、H27年度の学会で発表予定である。また、行動実験は、fMRI実験における刺激提示時間を決定するための予備調査を兼ねたものである。TOEIC420点程度以上であれば、5秒間の提示で十分なことが判明したため、fMRI実験は、刺激文の読解に不自由しない程度の英語能力を有する者(TOEIC420点以上)に対象者を絞って行っている。残り数名の実験協力者を追加募集すれば良い状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、知覚的記号システム理論にもとづく授業開発アプローチの妥当性検証と、英語教育手法の開発を目的とし、以下の3つの研究を行う。1) アプローチの妥当性を確かめるため、英語文理解時の運動領域の脳活動を検討する。2)学習者に行為をさせる英語教育手法を開発し、授業実験によって効果を検証する。3)開発した手法による教育を受けることで、運動領域の活性化程度が変化するか検証する。H26年度は、1)に対応した研究を行った。 まず、英語文233文と、それに意味的に対応する日本語文233文を作成し、客観的指標(日本語文字数、英語文字数、英語文単語数、日本語文モーラ数)、主観的指標(英語文親密度、日本語文親密度、英語文理解容易性)、意味的指標(文内容の経験性、文内容の心像性)を測定した。この結果を、既存の単語親密度データベースも利用して検討し、意味内容の心像性や文中で最も馴染みのない単語の親密度が、英語文の理解容易性に影響することを明らかにした。 次に、TOEIC得点が大学生平均を下回る者を対象に行動実験を行い、刺激文読解に必要な時間の測定を行った。同時に、行為を意味する英語文の理解時に、運動表象が活性化するかどうかを検討した。TOEIC420点程度以上であれば、5秒間の提示で十分なことが判明した。そこで、TOEIC420点以上の者を対象に、fMRI実験を実施している。まだ数名の実験協力者の追加が必要であるが、予備的分析の結果、英語文の理解時にも知覚運動表象が活性化していると言えそうである。これらの成果は、2編の学術論文での公表が確定しており、H27年度の学会でも2つの発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、知覚的記号システム理論にもとづく授業開発アプローチの妥当性検証と、英語教育手法の開発を目的とし、以下の3つの研究を行う。1) アプローチの妥当性を確かめるため、英語文理解時の運動領域の脳活動を検討する。2)学習者に行為をさせる英語教育手法を開発し、授業実験によって効果を検証する。3)開発した手法による教育を受けることで、運動領域の活性化程度が変化するか検証する。 現在、1)がほぼ終了し、2)及び3)に進む段階である。今後、すでに作成した英語刺激文を利用して、主に時制と前置詞の使用に関して、身体を使用した教育手法の開発を行う。また、効果測定として、紙面でのテストおよび行動実験、fMRI実験を行う。現状の問題は、英語文理解時に知覚運動表象が活性化したとしても、それが英語文理解によるものか、それとも英語文を日本語文に翻訳した結果、日本語文理解によって活性化したものかを切り分けることが困難な点である。英語教育手法開発としては、学習の促進が確認されれば問題はない。 しかし、促進される認知プロセスを考察する場合に、これは障害となる。そこで、日本語文提示時の促進量と、英語文提示時の促進量を比較検討する予定である。もし提示された英語文を日本語文に翻訳し、日本語文理解プロセスとして知覚運動表象が活性化するのであれば、その促進量は日本語文理解時と大差ないはずである。しかし、英語文の理解時に知覚運動表象が活性化するのであれば、促進量が異なると予想される。日本人学習者にとっては、英語文の理解の方が日本語文の理解より困難であるため、促進効果はより大きく現れる可能性がある。
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Causes of Carryover |
数名程度、実験の協力者が不足した。そのための実験費用等が、次年度使用額となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験の被験者を、H27年度当初から募集する。
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Research Products
(3 results)