2014 Fiscal Year Research-status Report
スローラーナーに対するジャーナルライティング指導とその効果
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26370640
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
馬場 千秋 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (50465374)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スローラーナーのライティング能力 / L2ライティングの流暢さ / L2ライティングの正確さ / 動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、本研究に関わる資料収集とリサーチによるデータ収集を行った。 資料収集は、オーストラリア・ブリスベンで開催されたAILA2014に参加し、ジャーナルライティング(以下JW)に関する研究の手法やL2ライティングにおけるフィードバック研究についての研究についての情報収集を行った。 データ収集は、平成26年度前期にJWを宿題で課し、教師がコメントをする場合のデータ、平成26年度後期にJWを授業中に行い、教師がコメントをする場合のデータの収集を行った。各学期ともに、前述のデータ収集が終了した後にそれぞれアンケート調査を行い、学習者にとって望ましいコメントの種類とコメントを書く人物についての調査を行った。 本研究の被験者は「スローラーナー」ゆえに、自宅での学習習慣がついていない学習者も多く、JWを宿題で課す場合と、授業中に行う場合では、課題作成の様子にも変化が見られた。前期の宿題として課した場合も、実際には授業が始まる間際に1~2行書く程度である者も複数見られ、分量もあまり多くない状況であった。後期に入り、JWを授業中に時間をしっかり与えて書かせることにより、分量も増え、正確な文を少しずつかけるようになる傾向であった。 アンケート調査によって、問題点も浮かび上がった。JWは、「好きなことを何でも書いてもよい」という形で始めたが、学習者からは、「特に書くことがない」「何を書いたらいいのかわからない」という声が多く上がった。スローラーナーによく見られる「どうやって書いたらいいのかわからない」「表現や語彙がわからない」ということについては、辞書使用を認めているので、クリアできたが、内容面の問題については、改善の必要があった。学習者からは、テーマがあったほうがよい、という声もあり、先行研究でもそれで成功している例もあるので、平成27年度のデータ収集の際、取り入れていくこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、本研究の目的のうち、スローラーナーがジャーナルライティングを行い, フィードバックを与えるのが,教員のみの場合、自宅学習として課す場合と教室内で行う場合での効果および、学習者が求めるフィードバックの傾向を明らかにした。データ収集についても、研究代表者の授業内で、毎回、学習者に提出させたJWデータを蓄積しているので、データ収集については、予定通り実施することができた。 自宅学習の場合、JWを行うための時間が学習者によって異なるため、一生懸命書いてくる学習者と授業開始前に教室で書こうとする学習者で分量に差が出た。さらに、辞書等を用いて書いてくる学習者と何も見ずに適当に書いてくる学習者でも、正確さに差が見られた。一方、教室での活動の場合、同じ時間帯設定で行うこと、辞書使用をきちんとするという同じ条件下で行っていることから、分量にも変化が見られ、正確さも向上してきている。アンケート調査からも、教室で書く活動を行うほうがよいという傾向にある。全体的なデータ処理については、今後行っていくことになるが、データ分析後に、流暢さ、正確さの点で、自宅学習によるJWと教室によるJWの利点と欠点についても、さらに明らかにしていく予定である。 自宅学習でJWを課すことにより、JWでのライティング能力向上という側面だけでなく、スローラーナーの学習に対する姿勢についても、深刻な状況が明らかとなった。また、英語で文章を書くことに慣れていないだけでなく、日本語でも文章を書くことに慣れていない学習者が被験者であるため、テーマがないとなかなか文章を書くことができない状況にある。学習者ができることとできないことの実情も本研究では明らかになってきており、本研究で最終的によりよい指導法を提案する際、考慮して行く必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究を進めていくにあたり、次の点を改善しながら実施する。 (1) テーマの設定:学習者から多く挙がったのは、「何を書いたらいいのかわからない」ということであった。日記のように好きなことを書かせるほうが自由度は上がるが、英語だけでなく、日本語でも文章を書くことに慣れていない学習者が本研究の被験者なので、テーマがない状態で課題を課しても、「ほとんど何も書けない」という状況を招く。この問題を回避するため、毎回、JWを課すときに、「何か書きたいことがある場合は、好きなことを書いてもよい」「特に書くことがない場合は、指定されたテーマで書く」という形とし、学習者自身が選択できるような形とする。 (2) フィードバック方法:平成26年度前期は、流暢さを求めようと思い、文法的なフィードバックを少なめにすることから始めたが、すぐに学習者のほうから、「間違えたところを直してほしい」という指摘があった。そこで、開始後数週間後から、文法のフィードバックも入れることとした。スローラーナーの場合、文法的に不正確な英文も多くみられるので、英語を書くこととそのフィードバックは不可欠である。そのため、文法的なフィードバックも細かく入れることとする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に人件費として、240,000円を計上していた。収集したデータをpdfにして保存したものを、データ処理、分析に使用するにあたり、Microsoft Wordへの打ち込み作業を行ってもらう人員への人件費として使用する予定であったが、データ打ち込み作業に入るのが遅れたために、平成27年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度、27年度に収集したデータの打ち込み作業を行ってもらい、人件費として使用する。
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