2016 Fiscal Year Research-status Report
韓国語学習者のための辞書引き支援ウェブ・アプリケーションと例文データベースの開発
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26370683
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
金 善美 (神谷善美) 大手前大学, 現代社会学部, 非常勤講師 (90621847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 菜穂子 帝塚山学院大学, リベラルアーツ学部, 教授 (40214621)
神谷 健一 大阪工業大学, 知的財産学部, 講師 (50388352)
森 真幸 京都工芸繊維大学, 情報科学センター, 助教 (90528267)
竹蓋 順子 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (00352740)
細谷 行輝 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (90116096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 授業支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は韓国語教育従事者チーム(研究代表者の金善美が総括)とシステム開発者チーム(研究分担者の神谷健一が総括)に分かれて活動していた。本研究の開始当初は日本語母語話者を対象とする高等教育における初・中級段階にある韓国語学習者のための辞書引き支援ツール等の開発を試みることを目的とし、Web対応授業支援システムWebOCMへの搭載を目指す研究を行っていた。 外国語学習において、ある一定のレベルに到達すると一時期、学習が円滑に進むようになるが、遅かれ早かれ次の壁に立ち向かうことを余儀なくされるものであり、これらを順風満帆に乗り越えていくことが外国語学習における成功の一つの鍵であることは多くの外国語熟達者が共有する経験であるように思われる。しかし大学生が初習外国語かつ非専攻言語として韓国語を学習する場合、学習時間上の制約もあることから、英語の場合とは異なり、辞書利用の入る余地がほぼなかったと考えられる。近年ではスマートフォンで利用できる無料の辞書も登場しているが、その一方でAIを利用していると思われる機械翻訳の急激な進化に伴い、研究計画自体の見直しが必要になり、別の方向性を目指すことが適切であると考えられる状況となってしまった。 韓国の研究者との意見交換なども含めた様々な模索があったものの、最終的に本研究では研究代表者の金善美と研究分担者の神谷健一の両名による授業支援システムの開発を目指すことになった。対象としているのは同様に初級段階であるが、とりわけ2016年度以降は文字学習の支援を効率的に進めることができるデータベース利用型ツールの開発を継続して行っており、2017年3月にはe-Learning教育学会にて口頭発表『韓国語教育におけるハングルフラッシュ型提示ツールとその実践利用』を行った。最終年度である2017年度には日本韓国語教育学会での口頭発表も計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、研究計画自体の見直しが必要となり、別の方向性を目指すことが適切であると考えられる状況となってしまったが、授業支援システムの開発においては当初の計画以上に進展していると考えている。また、この手法においてはプロジェクタとスクリーンという最小限の設備を用いながらも、従来型の授業とは異なり「黒板とチョークでは絶対にできない授業」の実現に成功していることから、新規性の高い授業形態であると考えている。 とりわけ文字学習においては、子音14個と母音10個からなるハングルの音節について、表示・非表示や、組み合わせる位置を瞬時に表示でき、また、同じ子音であっても文字連続の際に起こる連音化や濁音化についても表示できる点は優れており、さらに語末の母音・子音によって2種類に区別される3つの助詞(が・は・を)と組み合わせた場合の連音化・濁音化についても画面上のボタンの1回の操作によって実現が可能である。 さらに2017年3月に http://www.oit.ac.jp/ip/~kamiya/kor/ にて公開した改良版以降、iPadにも対応しており、授業者の自由度は一層高まったと考える。またiPadを所有する学生には自習用ツールとしての活用も見込めることから、今後の展開がますます期待できる。詳細は上記URLにて公開している資料に委ねるが、学生からの評価も非常に高い。 従来このような授業支援システムを用いた研究は、学習者支援型、つまり学習者の成績がどれだけ伸びたかによって測定される傾向があったが、教員支援型の授業支援システムについての研究は緒に就いたばかりであると考えている。我々教員の経験知では、適切な授業支援システムを適切な場面で利用するだけで、教室の雰囲気は全く異なったものになる。従来型の授業支援システムの利用に関する研究ではこのダイナミズムの変化が全く無視されていたといっても過言ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として考えられるうちの一つは、こうしたダイナミズムの変化に関する具体的な記述である。これらについて記述し、さらにアーカイブしていくことを今後、特に注力していきたい。なお研究分担者の神谷健一は、2017年度~2019年度には新たに研究代表者として1件、研究分担者として1件の科研費に採択されている。前者は「小中高大連携を見据えた外国語教育とICTの接点を探る研究ならびにアーカイブの開発」、後者は「生涯学習を目指したイタリア語・フランス語・ロシア語の習得を促進するツール類の開発」という研究課題であるが、これら2件の研究課題とも本研究課題が連携できる部分は少なくない。今後はこうした方向も見据えながら可能な範囲で共同研究を行なっていきたいと考えている。本研究課題は2017年度で最終年度となるが、とりわけ後者において今後開発されるであろう授業支援ツール類は、本研究課題が終了してからも韓国語教育において参考になるであろうことが大いに予想される。 ちなみにこれらはいずれも2013年度~2016年度に神谷健一が研究代表者(金善美は研究分担者として参加)として採択された「データベースソフトを利用した初習外国語授業における教材提示の円滑化と授業の活性化」の流れを汲んだものであり、私的な研究成果報告書(全355ページ)にまとめ、現在は http://www.oit.ac.jp/ip/~kamiya/gk-fires/ にて無料公開している。なお、当該報告書は国立国会図書館デジタルコレクションにも http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10317548 として収録されていることを付記しておく。
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Causes of Carryover |
研究計画の見直しが必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
GLoCALL(ブルネイ)への旅費として支払う計画である。
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Research Products
(9 results)