2015 Fiscal Year Research-status Report
英語読解力とその構成要素との発達的相互関係:縦断的研究
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26370697
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山下 淳子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (00220335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 第二言語 / 読解 / 縦断的研究 / 語彙文法力 / 母語の読解力 / 言語処理効率 / 聴解力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本の中等学校で学んでいる英語学習者の英語読解力とその構成要素の関係を、中3から高2までの3年間に渡って縦断的に調査するものである。縦断的デザインにより、構成要素と読解力の関係を発達的に観察し、因果関係をより説得的に検討することができる。この研究の前身となる横断的研究では同じテストを3学年の生徒に実施したが、本研究では、共通項目で関連付けられた異なるテスト(Test Battery 1,2,3)をそれぞれの学年に実施している。昨年度までに、2013-2014-2015年に中3―高1―高2と上がってきた生徒 (Cohort 1) のデータ収集が完了している。それに引き続き今年は、Cohort 2 (2014-2015-2016年に中3―高1―高2に在学)の高2としての最終年のデータと、Cohort 3 (2015-2016-2017年に中3―高1―高2に在学)の高1としての2年目のデータを予定通り収集した。Cohort 1,2,3とデータ収集を続けるのは、データ数を増やすためである。 収集したデータはテストデータ(1,0で採点されたスコア)とコンピュータ課題データ(1,0で採点された正答率とミリ秒で測られた反応時間)の2種類に大別できる。本年度はそれぞれのデータの本格的分析に入った。テストデータの分析はすべてのデータがそろったTB1について行った。ラッシュ分析にかけて受験者の能力値とテスト項目の困難度の推定を行い、能力推定値を使って、英語の読解力を他のテストスコアで説明する潜在変数を使った暫定的モデルの構築を試みた。コンピュータ課題データは、この研究で採用する外れ値の決定基準を先行研究や英語母語話者からとったデータを参考にしつつ確立し、段階を踏んでデータを編集していく手順を体系化した。そして、編集されたデータを使って、読解力を予測する暫定的モデルを探索的に求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下2つのことを計画していたが、ほぼ予定通り達成できた。 1. 高1と高2のデータ収集 まず、昨年度末に実施できなかった高2の国語のテストを4月に実施する課題があったが、協力校のご好意により、4月の早い段階で実施することができた。また、継続している学年末3月のデータ収集は、予定通り期末試験終了後の授業時間で、高1にTest Battery 2を、高2にTest Battery 3を実施してもらうことができた。横断的研究から連続して4年目になるこのデータ収集により、昨年に加えて、さらに約80名の生徒について(Cohort 2)、中3・高1・高2の3年間の縦断的データ収集が完了した。さらに別の80名の生徒については、2年目の高1のデータが収集された。
2. 収集が完了したデータの分析 この研究ではデータ収集が年度末となるため、データ分析は翌年から始めるというスケジュールになる。上に説明したように、TB1についての分析と、すべての学年について同じ課題を課すコンピュータ課題データの分析を行った。多量のデータについて不適合なデータポイントや外れ値を注意深く除いていく作業があるため時間がかかるが、研究協力者とともに年度中にできうる限りの分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は新しくテストを作る必要がないため、データ分析に集中する予定である。TB1の分析に引き続き、TB2を同様にラッシュ分析にかける。不適合な応答を除去した後、共通項目を利用してテストのリンキングを行い、中3と高1の能力推定値を各変数について求めていく。TB3のデータ収集が完了していないため最終的なモデルの構築はできないが、中3と高1について探索的にモデル構築を試みたい。またアンケートデータの分析にも着手し、モデル構築に入れられないかを検討する。これまでの分析からいくつかの課題がでてきているので、データ分析と年度末に向けてのデータ収集の準備をしながら、それらについての解決法を模索していく。それらの課題を下に列挙する。(1) 国語のテストを部分に分けていくと信頼性が低くなる。潜在変数として扱うか、1つのテストのまま観測変数として扱うかを決める。(2) 言語処理効率を測るコンピュータ課題では、測定した単語認知、正書法処理、音韻処理、文処理のうち、正書法処理と読解力の関係が予想外に弱い。その原因について理論的、方法論的に探っていく。(3) 欠損値へどのように対応するかを模索する。(4) 縦断的データの分析方法についてさらに調べ分析に生かす。以上のような観点からデータ分析を進めると同時に、現れてくるいくつかの知見を学会等で発表して、研究に生かせるフィードバックを得てゆきたいと思う。
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Causes of Carryover |
すべてのテストの印刷を予定していたが、一部昨年度の余剰を使うことができたので、印刷費を節約することができ翌年に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
縦断的研究では欠損値が多くなるため、その対応に役立つソフトを購入する検討をしている。繰り越された経費はこのソフトの購入資金の一部にあてたいと考えている。
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