2014 Fiscal Year Research-status Report
英語を活用した大学生の地域貢献活動が地域の異文化共生にもたらす効果
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26370702
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
山崎 祐一 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (50259735)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域貢献 / 異文化共生 / 英語教育 / 異文化理解 / 国際交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学と地域が協働することにより、大学生が英語を活用しながら地域貢献活動に継続的に取り組み、地域における異文化共生の促進に役立て、かつ大学生が持つ英語力を戦略的なコミュニケーションスキルに転換する礎を築くため、産学連携という形で佐世保商工会議所と密接に連携し研究活動を実施した。歴史的にアメリカ文化が混在し、米海軍基地と共存を余儀なくされている長崎県佐世保市にとって、異文化共生は様々な分野で必要性を感じるものであり、また乗り越えなければならない高いハードルでもある。それを一つひとつ地道にクリアする努力の一環として、外国人客来店支援事業に取り組んだ。市内の店舗が外国人客に対して英語で応対可能かどうかを見極めるため、ホテル、飲食店、小売店などについて想定される外国人客からの質問内容を、大学生と英語で文章化し、それぞれ業種別に事前調査用紙を作成した。その調査用紙をもとに、大学生がグループごとに各店舗を実際に訪問、英語でインタビューをするという形式で調査を実施した。結果、英語応対可能な店舗を70店舗決定し、「フレンドシップ店」として認可、店頭にその看板を掲げ、外国人客の集客に役立てる基盤を作った。その間、外国人客来店の際のキャンペーンを実施、学生たちは外国人客へのフライヤーの街頭での配布とともに、その内容を英語で詳しく説明する活動に参加することにより、さらに英語を身近で意味のある学習(Meaningful Learning)につないだ。また、本学が存在する佐世保市という地を十分に理解し、大学生の地域貢献活動をアメリカ文化や外国語としての英語教育の分野にも役立たせ、地域の異文化共生に寄与する研究活動も実践した。学生の英語学習に対する意識調査を実施しつつ、地域の異文化理解と英語学習に関する論文(査読あり)を執筆、学会発表3回、活動にも有効に利用できる英語表現に関する図書2冊を全国出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
商工会議所との産学連携による取組については、商工会議所の担当責任者と緊密に連絡を取り合うと同時に、定期的に直接大学に出向いていただき、研究活動内容について協議、かつ地域連携では非常に重要な産学双方の信頼関係樹立、維持にも尽力した。外国人客に対しての情報発信としては、各店舗に関する情報を入手後、英語に翻訳、英語でのマップとガイドを作成し(全33ページ)、約1500部無料配布した。研究テーマのひとつである「異文化共生」に関しては、トラブルとして発生いる内容や日本の習慣を外国人客に理解してもらえるよう、ガイドの中に「Useful Tips to Better Understand Japanese Business Practices(日本の商慣習をよりよく理解するための情報)」を英語で作成した。国内の調査に関しては、戦争の悲劇や米軍基地という長崎県や佐世保市と共通点を持つ沖縄県を視察し、資料を収集しつつ、異文化共生や外国人客集客についてのフィールドワークを実施した。また、東京オリンピック等に向けて東京都品川区で行われている外国人集客事業について、情報収集を実施した。全国学会でも、研究の目的や進捗状況などについて3回発表した。前年度に製作した『英語接客表現集』をさらに充実させるため、英語による応対や大学生の英語表現力向上のため、機能別、場面別に分類した英語表現に関する図書を2冊出版した。英語を活用した大学生の地域との連携は、産学連携のみに留まらず、国際交流や地域の小中学校の異文化理解教育や英語教育における教育連携、また長崎県や佐世保市における平和学習にもつなぐ努力をし、論文を執筆、掲載された(査読あり)。メディアでは新聞社とテレビ局、それぞれ数社から取材を受け、新聞に9回掲載、テレビでは4回放映されるなど(うちNHK総合では全国放送)、地域への情報発信の努力も怠らないようにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本学(長崎県立大学)経済学部は英語教育にも一定の目標を定め、学生たちがグローバル化した社会で実践的に活躍できるよう、その人材の育成に努めている。「英語の実践的活用」や「戦略的なコミュニケーションスキルの獲得」に必須である「異文化理解」、そして産学連携の目的のひとつである「街の経済の活性化」は、経済学部でありながら、英語学習にも力点を置く大学、学生、双方にとって、非常に有効な取組であると考える。また、本学が、原爆の悲劇を体験している長崎県、そして米海軍基地と絶えず共存している佐世保市に存在するという事実を意識し、大学生が英語を活用した平和学習、英語学習、異文化理解学習、国際交流などの分野にも、研究と活動の場を広げることをためらわないように努力したい。「地域に開かれた大学」という謳い文句は多くの大学に存在する。それが名ばかりにならぬよう、一つひとつ、地域に研究と活動のサイトを開拓し、大学、地域双方にとって有益なサービスラーニングやアクティブラーニングとしての研究を継続的に進めていく所存である。
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Causes of Carryover |
初年度に必要と思われた物品(ビデオカメラ等)が、予定よりも安価で購入できたため。また、その他(ハードディスク等)購入予定の物品を購入せずに、既存のものを使用できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用してきた既存のもの(ハードディスク、メモリーカード、インクなど)が使用限度になりつつあるので、それらを購入して使用する計画である。また、初年度、研究活動に使用しなかったモバイルパソコンとデジタルカメラを購入し、フィールドワークやそれによって得られた情報の管理に使用する予定である。
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