2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370703
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
成田 真澄 東京国際大学, 言語コミュニケーション学部, 教授 (50383162)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 学習者コーパス / 英作文 / ライティング能力 / 語彙的結束性 / 発達過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日本人英語学習者のライティング能力によるグループ分け:本研究で使用している日本人英語学習者(大学生)が産出した英作文データに対して、これまでに英語母語話者2名が分析的評価法に基づく評点を付与し、本評価の妥当性について多相ラッシュモデルという統計的手法により分析を進めてきた。2名の評価者による評点の差が大きい英作文(グループ分けをする上で問題となる英作文)の扱いを前述の統計的手法に詳しい研究者から専門的知識を得ながら検討するとともに、言語テストに関わる学会で口頭発表した。
2.同一語句の反復使用の分析:英作文としての評価に影響を与える可能性がある「繰り返して使用される語句」に着目して、英語母語話者と日本人英語学習者に見られる類似点と相違点を量的・質的に分析した。この場合、ライティング指示文に含まれる語句の反復使用と指示文とは関連しない語句の反復使用に分けて分析した。前年度に実施した分析に基づきながらも、分析対象の規模を拡大することにより、より包括的な研究結果を得ることができた。この分析結果は研究論文としてまとめ、国際的な学術論文誌に投稿し、採択された。
3.人称代名詞の使用分析:語彙的結束性に関わる語句として人称代名詞の使用に着目し、英語母語話者と日本人英語学習者に見られる類似点と相違点を量的・質的に詳細に分析した。分析結果は、国際学会で口頭発表した後、質的な分析を掘り下げることにより研究論文としてまとめ、査読を経て学内の論文誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.英作文データへの名詞(句)照応関係の付与:人称代名詞については暫定的な記述ではあるが照応関係の対応づけを終えているが、指示代名詞や定冠詞を伴った名詞(句)と照応関係にある名詞(句)の記述・分析に遅れが生じている。人称代名詞の使用に関する量的・質的分析と論文作成に時間を要したためである。
2.照応関係の可視化ツールの開発:当初は人称代名詞の使用に関しても可視化するツールの開発を計画していたが、前述の分析により人称代名詞の使用傾向がかなり多岐にわたるため可視化する意義を再検討することにした。さらに、指示代名詞や定冠詞を伴った名詞(句)による照応関係の整備ができた時点で、可視化する要素を絞り込む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.指示代名詞や定冠詞を伴った名詞(句)と照応関係にある名詞(句)の記述と分析:日本人英語学習者による英作文と英語母語話者による英作文に対して、対象となる照応関係の記述を加え、両グループにおける使用の差異を量的・質的に分析する。英作文に使用されている指示代名詞や定冠詞の検出は既存の言語処理ツールを利用することで容易に行えるため、効率的に記述を進めることができる。
2.照応関係の可視化ツールの開発:これまでに分析を終えている人称代名詞の使用に関する分析結果と前述の指示代名詞や定冠詞を伴った名詞(句)の使用に関する分析結果から、可視化する要素を決定し、情報工学の専門家の協力を得て可視化ツールを開発する。
3.語彙的結束性を高めるためのライティング指導法:本研究課題の研究成果を英語ライティング指導にどのように生かすことができるかを検討し、指導法を提案する。
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Causes of Carryover |
年度途中に入院と手術を伴う大病を患い、継続して治療を受けることが必要になったため、当初予定していた本年度の研究課題の一部を遂行することができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の理由のため本年度中に遂行することが特に困難であった研究課題は、分析対象の英作文(英語母語話者の英作文と日本人英語学習者の英作文)に使用されている指示代名詞や定冠詞を伴った名詞(句)と照応関係にある名詞(句)を同定して分析することである。言語処理ツールを活用して効率的に分析を進め、分析結果をもとにしてこれらの語句の使用傾向を可視化するツールの開発を行う。
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