2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370707
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
若林 茂則 中央大学, 文学部, 教授 (80291962)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 補文標識 / 補文 / 下位範疇化 / 不定詞 / 動名詞 / 完結性 / 母語の影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度までに日本語動詞の分類を進め、ト節の持つ統語的な性質と、ト節と主文の関係について考察した。1)ト節を補部に取る日本語の動詞は、発言・伝達動詞(例、言う)や評価・批判動詞(例、批判する)、内容に対する話者の心的・知的活動を表わす動詞(例、理解する)がある。対応する英語動詞は、that節を補部に取るとは限らない。2)英語のthat節が状態叙述に隣接して理由を表す場合(例 I am glad that he has gone.)that節は理由を表す。日本語のト節は同様の用法はない(例 *彼が行ってしまったと私は嬉しい)。3)一方、ト節は一般に、付帯状況を表す副詞節とみなすことができ(鎌田 2000)、動作動詞などとも共起できる(例 行ってくるぞと彼は出かけた。)以上の3点では、日英語間に違いがある。2016年度には、生成文法の枠組みでの研究(例 中島2016)を参考にし、また、分散形態論での研究(嶋村2017)を参考にしながら、ト節の性質を明らかにすべく、研究を進めた。 実証的なデータに基づく研究については、不定詞及び動名詞、および、小節と補文標識句の動詞句補部としての使用・判断データを基に理論的考察を行い、新たな2つの原理を提案した(Wakabayashi, Hokari, & Duenas, 2016; Wakabayashi, Hokari, Haniu, Fujimoto, & Kimura, 2016)。また、動詞句補部の意味について、完結性を題材に、補部名詞句の機能範疇の習得・使用が進むにつれて母語の影響が明らかになることを示した(Kimura & Wakabayashi, 2017)。いずれからも動詞句補部に係る文法知識について新たな面が明らかになったが、これらから埋込節の習得についていかなる予測が立つかについては、現在、考察を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集は現在も進行中である。データ収集が遅れている理由は3つある。1つは、日本語と英語の対応関係についての考察を深めるにつれ、日本語のト節と英語のthat節の違いが予想外に広範囲にわたることが明らかになってきたため、データ収集計画を変更した。新計画では「ヲ格名詞句をト節とともに補部に取る場合」「(表面的には)ト節のみを補部に取る場合」「~(スル)ノヲ/コトヲを補部に取る場合」という3つの観点から、日本語動詞を中心に据え、この3種類を基にマテリアルを作成している。ト節とthat節を中心にマテリアルを組み直し、文法性判断タスクと熟達度測定のためのプレースメントテストを用いて、実験を行う計画だったが、十分な被験者を得られなかった。2つ目の理由は、語彙習得だけではなく、より大きな観点から第二言語習得の文法知識の発達を捉えるため、補文標識句のみならず、小節・不定詞句・動名詞・名詞句を補部とする文の嗜好性(preference)や文法性に関する考察を行ったため、当初の計画よりも研究の範囲が大きくなり、その結果、当初計画の実験データ収集を継続して行う必要が出てきている。3つ目の理由は、母語話者のデータを取るため、オーストラリアの研究者の助けを借りて申請を行うための準備を進めてきたが、データ収集に予想以上の労力と費用が掛かることが明らかになったため、イギリスあるいは日本での英語母語話者からのデータ収集を行う方向に変更した点が挙げられる。このデータ収集は、研究期間を延長し、2017年11月ごろに実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで収集したデータに加え、2種類のデータ収集を行う。 (1)補文標識句を項に取る(ように見える)発言・伝達動詞(例、言う)、評価・批判動詞(例、批判する)、内容に対する話者の心的・知的活動を表わす動詞(例、理解する)を基に、日本語と英語の語彙の比較に基づいて仮説を立ててデータ収集を行う。(2)理由や付帯状況を表す副詞節として使われる「ト節」やthat節に関して、日本語と英語の構文の比較に基づいて仮説を立ててデータ収集を行う。(1)と(2)を比較することによって、日本語話者の英語習得に見られる母語の影響について、語彙と構文のレベルでどのような違いがあるかを明らかにする。また、これらのデータと、不定詞及び動名詞、および、小節と補文標識句の動詞句補部としての使用・判断データを不定詞及び動名詞、および、小節と補文標識句の動詞句補部としての使用・判断データを比較し、これまでに提案した2つの原理を検証する。 時程としては、9月までに日本でのデータ収集を終え、11月に渡英して母語話者からのデータ収集を終える計画である。必要に応じて、12月から1月にかけて、再度データ収集を行う。1月から3月にかけて、これまでの成果をまとめて論文として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
データ収集計画を変更したためデータ収集が遅れている。新計画では新たにマテリアルを作成し、文法性判断タスクと熟達度測定のためのプレースメントテストを用いて、次年度も実験を継続して行う。また、母語話者のデータを取るためイギリスあるいは日本での英語母語話者からのデータ収集を行う方向に変更して実施する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
9月までに日本でのデータ収集を終え、11月に渡英して母語話者からのデータ収集を終える計画である。必要に応じて、12月から1月にかけて、再度データ収集を行う。被験者に対する謝礼150,000円(1,500円×100人分)データ収集は、9月までに60人分、11月までに40人分のデータを収集する。データ収集のための旅費217,198円(イギリス5泊6日)
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] JLE’s use of infinitive and gerund, and of more and -er2016
Author(s)
HANIU, Yasuaki, WAKABAYASHI, Shigenori, HOKARI, Tomohiro, FUJIMOTO, Takaaki, & KIMURA, Hirotaka
Organizer
The Pacific Second Language Acquisition Research Forum
Place of Presentation
Chuo University, Tokyo
Year and Date
2016-09-10 – 2016-09-10
Int'l Joint Research
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