2014 Fiscal Year Research-status Report
タスク基盤の情報交換が生み出す言語能力創発の契機と学習者の発達軌跡
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26370716
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
松村 昌紀 名城大学, 理工学部, 教授 (60275112)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タスク / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の端緒を開くため、研究計画にしたがって平成25年度に収集していたデータを質的に分析した。具体的には、日本語を母語とする英語学習者が在籍する大学において、授業で情報交換型のタスクに取り組む際の学習者間の相互作用に見られる特徴を抽出することを試みた。その結果、いわゆる「間違い探し」、「描画複製」、「ストーリー復元」という、学習者の間に情報格差を生じさせる3つのタスクへの取り組みの中で、実際に (1) 協働的・共感的な反復、(2) 発話の協働的な構築、(3) 表現形式の改訂、(4) 支援的な情報提供、(5) 特定形式の意図的な強調、といったやり取りの特徴が生起していることが明らかになった。 上記の各特徴が言語発達に対して持つ意味は、第二言語習得や関連する諸領域の理論に照らして理解することができるが、平成26年度にはそれぞれの重要性を示唆する理論的な背景を整理したうえで、その役割を実際のやり取り例に基いて考察し、得られた知見を中部地区英語教育学会で発表、さらに論文として公刊した。研究成果は同年度中に行った招待講演(英語授業研究学会)でも、実際のやり取りの例とともに示した。近年、情報交換型タスクの意義を低く見積もってきたいくつかの研究に対して、それらの結果は一定の反駁となり得る。 平成26年度における他の成果としては、新しく刊行されたものを含めて、研究課題に関連する重要な論文や書籍を当初考えていたよりも多く収集できたことを挙げることができる。それらの検討・吟味は本研究の一層の充実につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究には、すでに収集してあったデータを質的に分析することによって着手したが、録音された口頭表出プロトコルの書き起こしを伴うこの分析に予想以上に時間を要したため、新しいデータ収集へと至ることはできなかった。しかしながらその分析によって、言語発達の契機となり得るやり取りの重要な特徴を抽出するという研究の部分的な目標を達成することができた。それに基づき、平成26年度の後半には、次の段階のデータ収集にどのようなタスクを用いるべきかなどを、文献を参照しながら検討することに重点を置いて研究を進めた。結果として、今後のデータ分析のための新たな視点や、数量的分析の手法について、いくつかの新たな示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、前年度に質的に分析したデータに数量的な分析を加え、言語発達の契機となり得るやり取り特徴の出現がタスクの違いによってどのように異なるのかを明らかにする。その成果は、必要があれば確認・検証のための追加データ収集とその分析を経て、国際学会であるTBLT 2015で発表することにしている。 さらに本年度中には、言語発達上意味を持つと考えられるやり取り特徴の生起において、(1) タスクの難易度、(2) 学習者の習熟度、(3) タスクの繰り返しといった要因がどのように関与するのかということを、新たなデータを収集して分析し、明らかにする。そのために、用いるタスクの選定や対象とする学習者の特定などを早急に進める予定である。その際、先行研究の結果や現在の領域全体の課題に照らして、上記3つの要因のうちのいずれかに重点をおいた実験計画を立てることも視野に入れて考えていく。
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Causes of Carryover |
本研究の端緒となる既取得データの分析に注力する必要が生じ、新たな実験の計画・実施を見合わせたため、データ書き起こし作業の委託に伴う謝金、および分析用ソフトウェアの購入が不要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に遂行できなかった実験を本年度に行う際に使用する。
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