2015 Fiscal Year Research-status Report
北米の大学で学ぶ日本人・韓国人・中国人の英文ライティングに見られる文法知識の特徴
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26370720
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡裏 佳幸 福岡工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00389397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 英文ライティング / 文法知識 / 第二言語としての英語学習者 / TOEFLライティング / テスティング理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、北米の大学で学ぶ第二言語としての英語学習者である、日本人・韓国人・中国人の英文ライティングに見られる、特徴的な文法知識(grammatical knowledge)を分析することである。それゆえ、平成27年度の研究計画は、(1) データ収集、データ分析についての専門家との意見交換、(2) データ収集用ホームページの修正、(3) 文献・資料の収集、(4) データ収集用ホームページの試験的運用、であった。 第1に、今後の研究計画について、ライティング理論、テスティング理論の大家であるAlister Cumming博士(トロント大学教授)、第二言語習得理論の専門家であるPaul Quinn博士(トロント大学)と意見交換を行った。その結果、TOEFLのIndependent Writing Taskの形式(解答時間30分)を採用することとした。また、被験者数については、効果的分析を重視して、日本人・韓国人・中国人のそれぞれ30名余り、合計で100名とする。第2として、昨年度に作成したデータ収集用ホームページを修正した。具体的には、被験者がライティングタスクに集中できるよう、アンケート項目のスリム化を図り、ライティングタスクにタイマーを設置した。第3に、意見交換のためにトロント大学を訪問した際、同大学ロバーツ図書館において、本研究に関連する分野の文献・資料を収集した。第4として、データ収集の開始に備え、北米在住の大学生に依頼し、データ収集用ホームページが、海外からのアクセスに対応できることを確認した。さらに、意見交換の結果、調査対象大学の選定にも着手した。英文ライティングの分量や語彙レベルにばらつきが生じないためには、被験者の英語力が同レベルであることが望ましい。それゆえ、入学要件のTOEFLスコアごとに、複数の大学をリストアップした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度における研究計画として、次の4点を想定していた。すなわち、(1) データ収集、データ分析についての専門家との意見交換、(2) データ収集用ホームページの修正、(3) 文献・資料の収集、(4) データ収集用ホームページの試験的運用、である。Alister Cuming博士(トロント大学教授)、Paul Quinn博士(トロント大学)と議論の場を持つことによって、第二言語習得理論、ライティング理論、テスティング理論の観点から、様々な有益な情報が得られた。その結果、上記の研究計画を滞りなく遂行することができただけではなく、研究実績の概要に記載した通り、(5) 調査対象大学の選定にも着手することができた。 それゆえ、平成27年度までの研究実績は、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成28年度においては、調査対象大学を決定し、データ収集を開始する。また、専門家との意見交換を行いながら、データ分析にも着手しなければならない。第1に、前年度にリストアップした調査対象候補の大学から、入学要件のTOEFLスコアを基準として、対象大学を絞り込む。第2として、データ分析に着手する前に、世界的に著名な社会言語学者であるJ. K. Chambers 博士(トロント大学教授)との意見交換を行うことによって、社会言語学的観点から、言語の多様性と変化について助言をいただくことを検討している。第3として、専門家の助言に基づいて、データ分析に着手する。データ分析結果については、国際学会において研究発表を行う予定である。 本研究の最終年度である平成29年度は、データ収集を継続しながら、データ分析と研究総括を行う。第1に、英文ライティングに見られる特徴的な文法知識を明らかにする。第2として、第二言語習得におけるインプットの影響が、研究対象者のライティングに何らかの形で反映されることが予想される。そこで、第二言語習得におけるインプットの権威Patsy M. Lightbown博士(コンコーディア大学名誉教授)、Nina Spada博士(トロント大学)との意見交換を検討している。また、今後の発展的な研究遂行するために、被験者のTOEFLスコアとWriting能力との相関関係についても、検証する予定である。さらに、今回の研究対象である、北米の大学で学ぶ日本人・韓国人・中国人の文法知識の特徴と、母語話者の英文ライティングに見られる文法知識の特徴とを比較することも、前者の特徴を明らかにする上で必要不可欠である、と考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度以降において、より発展的な研究を目指して、北米の大学で学ぶ英語母語話者(NS)のデータ収集も実施し、日本人・韓国人・中国人(NNS)の英文ライティングに見られる特徴的な文法知識と比較・研究することを検討している。今回の研究対象である、北米の大学で学ぶ日本人・韓国人・中国人の文法知識の特徴と、NSの文法知識の特徴との比較・研究を通して、前者の特徴をより明確にするためである。それゆえ、NSの文法知識の専門家らとの意見交換が必要となる。さらに、オンラインによるデータに見られる特徴的な文法知識の検証だけではなく、手書きによるデータに見られる特徴的な文法知識の検証を実施することも視野に入れている。 したがって、意見交換、現地でのデータ収集のための調査活動旅費として、次年度使用額が発生している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のとおり、現地でのデータ収集を実施する場合、アメリカ、カナダの大学、カレッジを直接訪問し、日本人・韓国人・中国人が受講しているクラスの担当者に、本研究への協力を依頼するとともに、収集したデータの扱いについて説明する必要がある。さらに、カナダの研究協力者との共同研究への発展可能性を考慮して、現地での意見交換を通じて、より効果的なデータ分析、研究総括の実施を考えている。 それゆえ、主として、そのための調査活動旅費として使用する予定である。
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