2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370747
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
石田 卓生 愛知大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (50727873)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国語文章語教育 / 中国語口語教育 / 日清貿易研究所 / 東亜同文書院 / 高橋正二 / 華語萃編 / 慶応大学 / 漢文教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
【論文】「東亜同文書院の文章語教育について」(『記念報』第24号、愛知大学東亜同文書院大学記念センター、2016年3月):本稿は東亜同文書院(以下書院)の文章語教育の実態を明らかにしたものである。書院の中国語は口語と文章語の二本立てであり、文章語教育は当初は漢文教育に近いものだったが、書院の教学経験の蓄積と共に外国語教育に変化したことを明らかにした。 【口頭発表】「日清貿易研究所の教育について:高橋正二手記を手がかりに」(日本現代中国学会第65回全国学術大会、2015年10月25日):書院の実質的な前身校日清貿易研究所(以下研究所)の学生高橋正二の在学時の手記に基づき、研究所の教育活動の実態を明らかにした。研究所を運営したのは軍関係者であったが、教育自体はビジネススクールであった。ここで使われたテキストは書院でも用いられており、研究所の中国語教育について考察をすすめることは書院研究である本研究の一環である。 「東亜同文書院の文章語教育について」(日本現代中国学会東海部会第6回研究集会、2016年2月20日):書院の中国語教育について、従来取り上げられてこなかった文章語教育についての研究成果を発表した。戦後の日本では実施されていない文章語教育であるが、現代における需要や可能性といった現代的意義について所見を述べた。 【資料調査】北京国家図書館:2015年9月10-12日:『華語萃編』など書院関連資料を調査した。書院廃校時に中国側に接収されたと思しき関連資料が公開されはじめていることを確認した。九州大学図書館、福岡県立図書館、福岡市立図書館、向野堅一記念館:三図書館では主に書院教員も務めた高橋正二について調査をすすめた。記念館では研究所使用の中国語教材の一部を確認した。また、慶応大学で使用されていた『華語萃編』を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、東亜同文書院(以下書院)の中国語教育に関わる研究成果を論文1本のほかに、日本現代中国学会全国大会ならびに同会東海部会で公表しつつ、北京国家図書館をはじめとする中国国内に所蔵されている書院旧蔵と思しき書籍・資料の存在を確認し、さらに従来書院以外の大学での使用が確認されていたなかった『華語萃編』の慶応大学版を入手するなど、平成26年度以来の研究成果をベースにして研究活動を大きく前進させることができた。 また、平成27年度当初計画は書院教員による中国語教育関連著述を主な対象としていたが、実際には書院の文章語教育教材を中心に研究をすすめた。これは、平成26年度からの本研究によって、書院の中国語教育が口語教育と文章語教育の二つに分けられていたことが明らかになったためである。口語と文章語の授業は、それぞれ専任の教員が配され、テキストも専任教員が作成するなど、両者は全く別の体制であり、書院の中国語教育は二本立てだったといえる。しかし計画当初の本研究も含め、これまで書院研究の研究対象は口語だけについて行われていた。それは中国語教育史全体の傾向でもある。書院の中国語教育を総体的に捉えようとするならば、従来型の口語教育研究だけではなく、文章語についても理解する必要がある。この本研究の深化によって新たに見出された研究課題の重要性は、書院教員著述についての考察よりも優先的にすすめられるべきものであり、本年度は文章語教育について積極的な研究活動を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの研究成果をベースにして、平成28年度では当初計画の通り、戦後の愛知大学での中国語教育との接続について研究をすすめる。その際には、本研究で新たに見出した東亜同文書院(以下書院)の中国語教育中の口語と文章語の問題も取り上げながら、書院の中国語教育の変遷や特徴、独自性などを通時的に明らかにしていく。 また、本研究での成果を積極的に対外的に発表していきたい。すでに日本現中学会機関誌『現代中国』の平成28年度版への投稿は審査を経て論文として掲載されることが決定しているが、これとは別に同様のレフリー制媒体への論文の投稿を予定しており、研究成果を即時に公表していくことを心がけたい。
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Causes of Carryover |
当該年において次年度使用額が生じたのは、平成26年度において研究環境の整備と現有資料整理を優先して在外資料調査を実施しなかったためである。当該年では北京での資料調査を実施するなど、当初計画に沿った研究活動をすすめているので問題はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度での資料調査に充てる計画である。本研究計画当初の台湾あるいは国内の研究機関、またすでに調査を終えている北京なども資料規模が大きいことから再度調査の必要を認めており、日程、予算を鑑みつつ、本研究遂行に有効な地点を再度考慮した上で資料調査を実施する。
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