2014 Fiscal Year Research-status Report
日本型早期英語教育を推進するクラウド型デジタル英語学習教材システムの研究開発
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26370752
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
松宮 新吾 関西外国語大学, 英語キャリア学部, 教授 (40411558)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外国語活動実施状況調査 / 早期英語教育国際比較調査 / 早期英語教育に関わる基礎データベースの構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,平成23年度から実施されている小学校「外国語活動」の実効性を高め、日本の英語教育の改善とボトムアップを図ることを目指し、小中一貫英語教育のカリキュラム開発と、小中一貫英語教育を推進するための学習評価支援システムと連動させたクラウドベースのデジタル学習教材の研究開発を行う。そのために、日本やアジアの諸国・諸地域における初等・中等学校の英語教育で使用されているデジタル学習教材や標準化されたテスト等の分析に基づき、日本の教育環境に最適化された日本型早期英語教育・小中一貫英語教育を推進するための、ハードウェアの環境に依存しないクラウド型の学習コンテンツと児童生徒の英語学習成果を評価するためのシステムを構築する。 1.小学校英語教育の実施状況に関わる基礎データベースの構築 研究初年次である平成26年度は,平成17年度から継続的に実施している日本における小学校外国語活動に関わる英語学習実態調査と,中国及び韓国における小学校英語教育の実施状況調査の結果を,多変量解析することができるよう整理統合し,以降の研究で,小学校外国語活動の教育効果や課題を実証的に検証するための基礎となるデータベースを構築した。 2.日本・中国・韓国の早期英語教育に関わる国際比較研究 小学校英語教育の基礎データベースを用いた多変量解析の成果の一部は,「日本・中国・韓国の早期英語教育に関わる国際比較研究ー日本型小学校英語教育の創設へ向けての提言ー:A Cross-national-research on Early English Education in Japan, China, and the Republic of Korea」というテーマで論文としてとりまとめ,関西外国語大学「研究論集」で採択され,公表された。 松宮 新吾(2014)「日本・中国・韓国の早期英語教育に関わる国際比較研究ー日本型小学校英語教育の創設へ向けての提言ー」関西外国語大学『研究論集』, 100, 299-319.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年次である平成26年度には,研究課題として設定した3つのテーマの中で,「①外国語活動、および、英語学習実態調査を実施し、外国語活動の教育効果を実証的に検証することで、外国語活動に関わる現行の学習教材の有用性や課題を明らかにする。」について,大阪府教育委員会,枚方市教育委員会,門真市教育委員会,八尾市教育委員会等との連携協力により,これまで国内外(日本・中国・韓国)で実施してきた調査研究のデータを,多変量解析を行うために基礎データ・ベース化することができた。これに基づき,日本における小学校外国語活動の教育成果と,中国及び韓国における小学校英語教育の教育成果とをパス解析(共分散構造分析)によりモデル化し,各要因間の因果関係や共変関係を追究・比較分析する中で,日本型早期英語教育の課題や方向性を明らかにすることができ,論文としてとりまとめ投稿し,採択された。 特に,研究成果の一端は,文部科学省が主催する教員免許更新講習や,大阪府教育委員会が主催する10年経験者研修,大阪府下の市町村教育委員会が主催する小中一貫英語教育指導者研修等において講師を務める中で,広く普及を図るとともに,教員研修の主たるリソースとして活用した。 次に,第2のテーマとして設定した,「②日本及びアジア諸国で活用されている英語学習教材を調査研究する中で、日本の学習環境に最適化され、使用するハードウェアに依存しない、クラウド型のデジタル学習教材を開発・運用し、その教育的効果を検証する。」については,韓国の梨花女子大学(ソウル市)初等教育学部のDr. Hey Young Chung女史,及び,台湾の東海大学(台中市)英語教育センターのDr. Li-chiung Yang女史との連携協力を得て,各国・各地域の初等・中等学校における英語教育の視察や教員インタビュー,資料収集等を行い,国際比較研究の基盤を形成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては,初年次の調査分析結果に基づき,クラウド型デジタル学習教材の研究開発を中心に位置づけ,認知学習に関わる学習コンテンツが極端に不足している日本型早期英語教育の課題を解決するために、小中一貫英語教育に最適化された学習教材を開発するとともに、評価育成システムを合わせて開発・試行し、それらの有用性を検証する。そのために,以下の4項目を研究テーマとして本年度の研究を推進する。 ① 小中一貫英語教育の教材開発:小学校1年生から6年生までの6年間、および、中学校3年間を見通した小中一貫9年間の英語教育カリキュラムに対応することができる教材のフレームワークを開発する。 ② 外国語活動の学習成果を測定するための評価育成システムの開発:小中一貫英語教育を推進することができる評価育成システムを設計・開発する。特に、韓国や台湾における評価システム等を参考に、初年次の調査分析結果をベースに、①で開発する学習教材の有用性も併せて検証することができる枠組みを構築する。 ③中国・韓国・台湾の小学校英語教育実態調査・実地視察:教科として小学1年生より英語教育を実施している中国,台湾,及び,小学校3年生から教科として実施している韓国の小学校で、英語教育実態調査と英語教育の実地視察を行い、日中韓,及び,台湾における早期英語教育の比較調査データを得る。また、各国・地域で使用されている検定教科書やカリキュラム、教材開発や評価方法等についての資料・データ収集を行い、システム開発のための基礎データ資料とする。 ④ カリキュラム開発及び教材開発におけるフリンダーズ大学(オーストラリア)IELIとの連携:ESL教育に定評のあるフリンダーズ大学IELIとの連携を強化し,本研究成果や開発した教材等の検証を行う。また,本年度後半からは,研究成果や開発した教材等をインターネット上で公開するための準備に着手する。
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Causes of Carryover |
平成27年度には,クラウド型デジタル学習教材の研究開発と開発した学習教材の教育的有用性の検証を中心に実施する。そのために,必要な教材開発費用(開発のためのツール,アプリケーション,文房具,記録メディア等)や,ネットワークの構築等に関わる研究開発費用が必要となる。 また,外国語活動の学習成果を測定するための評価育成システムのフレームワーク構築にも着手するための研究開発費が求められる。そのためには,中国・韓国・台湾,および,オーストラリアの関係各教育機関との協同連携の下,各国や地域で用いられている,また,開発されている学習デジタル教材の入手や評価を行うとともに,小学校英語教育における児童・生徒の学習成果を評価するための評価システムに関わる情報や資料の収集を行うための渡航費等が必要となる。 さらに,年度後半には,開発したクラウド型デジタル教材をインターネット上で公開するための準備費用が求められる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.クラウド型デジタル学習教材の研究開発と評価育成システムに関わるフレームワークの構築:小学校外国語活動等の実施状況調査結果に基づき,タブレット端末に対応したデジタル学習教材を研究開発し,クラウド上での運用が可能となるよう,ハードウェア及びソフトウェアの整備・開発を行う。そのためには,タブレット端末や教材開発のために必要なアプリケーションソフトウェア,及び,開発した教材データを保存するためのストレージ等を購入する。 2.クラウド型デジタル学習教材と評価育成システムの検証:開発したクラウド型デジタル学習教材を国内のみならず,小学校英語教育の先進国・地域である中国,韓国,台湾,及び,オーストラリアの関係教育機関で,その教育的効果を実証的に検証する。また,海外の連携教育機関での現地調査や資料収集等を継続的に実施し,日本型早期英語教育(小中一貫英語教育)の構築・推進のために必要な提言を取りまとめる。
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