2015 Fiscal Year Research-status Report
19世紀英領植民地世界における「家族の標準化」とその限界
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26370759
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中沢 葉子 (並河葉子) 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 反奴隷制運動 / 家族 / 結婚 / 近代化 / イギリス帝国 / 教育 / 女性 / ミッション |
Outline of Annual Research Achievements |
・7月に来日した研究協力者、ロンドン大学のShihan氏と、インド洋世界とカリブ海世界における反奴隷制運動期の奴隷の家族の状況について比較検証の方法などについて議論。インド洋世界の奴隷とその子孫たちの社会生活の状況についての報告会を神戸市外国語大学で開催。 ・研究代表者の並河はイギリス領西インド植民地の奴隷の家族の実態についての文献を調査。フランス領やスペイン領西インド植民地、つまりカトリック世界の奴隷とイギリス領西インド世界では奴隷の生活や法的な位置づけが大きく異なっていたことが明らかになった。また、研究のなかで、奴隷に対するキリスト教化において聖書協会と学校の連携が重要な役割を果たしていたことが史料的に裏付けられた。成果を「イギリス領西インド植民地における「奴隷制改善」と奴隷の「結婚」問題」(『史林』第99巻1号(特集号「家族」)(2016年1月)、146-176頁)として発表。 この研究成果の一部は青山学院大学で開催された世界子ども学研究会で報告(「イギリス領西インド植民地における奴隷の女性と子どもたち」世界子ども学研究会 第16回研究例会、青山学院大学、2016年3月29日) ・反奴隷制運動に端を発する近代的な価値規範が19世紀後半以降に世界化するプロセスについて検証するため、Professor Joyce Goodman (University of Winchester)を迎えた国際セミナー、「イギリスにおける教育史研究の潮流ージェンダー・トランスナショナリズム、エージェンシー」を科研基盤(C)「欧米大学間における女性の教育研究交流に関する歴史的研究」(代表香川せつ子)と共同で開催し、女性宣教師が果たした役割について、反奴隷制運動とのつながりを踏まえてコメント。反奴隷制運動の時期に確立する新たな家族や道徳の規範が19世紀を通じて世界化するプロセスが具体的を提示できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリス領西インドと西アフリカのシエラレオネ植民地における奴隷の家族について比較検証することが研究の大きな柱であるが、西インド植民地については一定の成果を論文のかたちで公表することができた。シエラレオネ植民地については、次年度研究する方向で、文献の収集などに着手している。 研究協力者との意見交換により、次年度以降の研究協力の具体的な方向性について議論が進んでおり、奴隷の家族のかたちがそれぞれの社会でどのように異なっているのかについて、具体的な検証ポイントの絞り込みを行うことができた。 また、反奴隷制運動以後にこの運動が与えた影響について、19世紀後半から20世紀初頭の女子教育ネットワークの検討、分析を行うセミナーを企画し、19世紀全体を通して近代的な価値規範がどのように世界化したのかについて、具体的なプロセス、価値規範の内容についてのディスカッションを他の研究者を交えて進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・研究協力者のDr.Shihanと、ロンドンおよび日本で大西洋およびインド洋地域の反奴隷制運動とその影響について、「家族」への影響に注目して比較検討を進めており、今年度中か来年度の早い時期に日本かロンドンでセミナー開催を企画している。なお、このセミナーには関連分野の日英の研究者に参加を打診中である。 ・反奴隷制運動がシエラレオネに及ぼした影響について、解放奴隷のコミュニティの家族のかたちの変化を中心に検証を試みる予定である。また、奴隷制社会の何が問題にされたのかをフランス領、スペイン領などイギリス領以外と比較しながら考察し、奴隷の社会的位置づけの違いとそれが彼らの社会生活や法的地位に及ぼした影響についての検証を今年度に引き続いて行う予定である。 今年度中に、奴隷たちの生活改善に向けてキリスト教ミッションが果たした役割について、とくに聖書協会との連携や教育活動の内容に注目して分析した論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度招聘予定であった研究協力者のロンドン大学のDr.Shihanの招聘経費のうち航空券代が不要となったため、当初計上していた予算額とズレが生じた。Dr.Shihanとは神戸で複数回のディスカッションを行い、これまでの研究成果の確認を行うとともに、今後も研究協力を継続することを確認し、2016年度に再度ロンドンか日本で研究交流を行うことになった。 研究地域が西インド地域、西アフリカ地域、インドなどイギリス帝国各地にわたっているため、効率的な研究推進のためにEmpire Onlineなどの電子データベースを活用することとし、そのために予算を調整する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度にイギリス帝国について広範囲の資料を網羅したAdam and Mathew社の電子データベース、Empire Onlineを購入する予定である。
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Research Products
(4 results)