2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370760
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
工藤 晶人 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (40513156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地中海 / 法社会史 / 植民地 / フランス / アルジェリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで主として中世史・近世史において蓄積されてきた、地中海周辺地域におけるヨーロッパとイスラーム世界の接触・交渉という領野を19世紀史においても開拓しようとするものである。そのための具体的方策として、植民地法の多元性に着目した。本年度の実績は以下の四点に要約できる。 第一に、昨年にひきつづいてマルセル・モランによる 「ムスリム・アルジェリア法」法典化の計画と、それに先立つ19世紀アルジェリアの法学議論について検討をつづけた。 第二に、チュニジアとレバノンにおける土地制度史の比較検討に着手した。アルジェリアからの政策的影響という視点と、それぞれの地域における固有の歴史的文脈とをどう接合するかという課題が浮上した。なお27年度に予定していたパリにおける史料調査は28年度に実施する予定である。 第三に、昨年から課題としてきた地中海史を歴史記述の枠組みとしてどう位置づけるべきかというテーマについて、一定の見通しを得ることができた。その目的は、西洋史と東洋史という分野の壁を越えて、省察の場を広げていくための提言にある。具体的な成果の一部は2016年度日本西洋史学会において報告し、今後、二本の論文として公表する予定である。 第四に、新たに派生したテーマとして、法文化の接触にかかわった実務家たちの集団伝記的研究についても予備的な研究を開始した。法律家だけでなく、行政官、外交関係者などの著作をつうじて個人史と社会構造の考察とを接続することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施する予定であった海外史料調査は28年度に延期したが、文献調査を中心として次年度以降につながる十分な成果をあげることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究中に派生した課題である地中海史の方法論についての提言を念頭におきつつ、西地中海と東地中海とを結ぶ新たな視点の提示につながる研究をめざしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度のパリ出張を次年度に延期し、それに代えて短期間のイギリス出張を実施した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、おもにパリおよびイギリスにおける史料調査にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)