2015 Fiscal Year Research-status Report
典籍に関わる史資料の悉皆的調査を踏まえた古代知識・思想構造の総合的研究
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26370761
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中林 隆之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30382021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 真 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90507138)
遠藤 慶太 皇學館大学, 付置研究所, 准教授 (90410927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 古代史 / 経典目録 / 仏典 / 漢籍 / データベース / 東アジア世界 / 華厳宗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本古代に所在した諸典籍について、10世紀末以前の史資料を対象として原本の将来とその保管・貸借・書写・流布の実態を悉皆的に蒐集・整理・データ公開していく。それを踏まえ、東アジア世界の中での日本古代の知識・思想の構造的特徴や、列島内での仏教を軸とした思想の伝播と統合の過程を解明することを目的とする。本年度の成果は以下の通り。 1.入唐八家の将来した仏典・漢籍の目録データ、および寺院縁起資財帳に記載された典籍データの整理作業を共同で進めた。 2.研究代表者は、典籍目録のデータ整備の過程で、古代仏教の中で教学面で基軸的な位置をしめた華厳宗の教学上の特質を8世紀~10世紀初頭の経典目録を比較検討することにより示し学術論文として公表した。また、平安前・中期の華厳宗の新展開の状況を、華厳宗の学僧道雄による年分度者制度の拡充と山城国海印寺およびその子院(法勝院)の整備などの動向や、古代王権の宗教政策との関係から提示し、これを新羅王権による加耶山海印寺創設や新羅華厳宗の整備の動きなどと比較することで、日本華厳宗の特徴や、当該期の王権の宗教的指向性を解明した。これも学術論文として結実させた。さらに、研究分担者の遠藤慶太も、典籍研究の成果として、学術図書(新書)を刊行した。 3.研究代表者は、将来典籍の入手ルート特定のための検討作業の一環として、入唐八家のうち、とくに最澄・円珍らの滞在・寄港地である、江南諸地域の寺院群や関連遺跡、具体的には天台山国清寺・方広寺・龍興寺・峰山道場、近隣の博物館などを見学調査した。 4.上記の調査巡見の中で、浙江大学人文学院西渓田家炳書院211室にて、「古代東アジアと日本の仏教」と題する研究発表を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ整理作業は、とくに漢籍の調査とデータベース化がやや遅れ気味であるものの、整理調査の過程で扱った諸資料の分析や中国江南地域での現地調査などを踏まえた成果として、学術論文を2編(代表者)・学術図書一編(分担者:遠藤慶太)を公表できた。また国際研究会での口頭報告も1回行った(代表者)。よって全体的には、おおむね順調に研究が進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、作成中の諸典籍データベースを完成させ、WEB上に公開することを目指す。また3年間の研究活動を総括する研究成果報告書を作成し、学会に提示する予定である。なおこの成果報告書には、整理したデータの他、研究代表者・分担者による論考を掲載する見込みである。
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Causes of Carryover |
研究代表者・分担者とも他業務との関係で、予定していた打ち合わせや共同の研究会が開催できなかったため、旅費の執行が当初予定より少なくなった。また整理途上のデータベースのweb化へ向けたプログラム化作業の遅れから、関連する研究補助の雇用を見送り、その部分を物品費に充当することとしたが、すべては執行仕切れなかった。それらを次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である今年度には、研究総括のための研究会・打ち合わせを実施する。そのため旅費の一部に充当する。また典籍データベースの作成作業をさらに進展させ、web公開のためのプログラムを完成する。その準備のための、研究補助の雇用を含めた経費にも活用する。また研究成果報告書も印刷予定であるので、そのための準備にも充当する。
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