2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370769
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
上川 通夫 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (80264703)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本中世形成史 / 中世仏教 / 山寺 / 民衆思想 / 普遍思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、著書・論文の発刊(単著図書1、共著図書4、単著論文2)、学会等での報告(学会等報告4)、史料調査とフィールドワークについて、バランスよく遂行できた。このうち、『愛知県史』『三重県史』の通史編執筆は、かねてからの計画を完遂したものだが、本研究課題と密接な構想によって叙述することができた。単著『平安京と中世仏教』は、本研究課題の中間報告としての位置づけをもっている。 東アジア世界の中の日本中世形成史を跡づけることによる普遍思想の鉱脈把握について、「北宋・遼の成立と日本」(論文)、「摂関期仏教の転回様式」(報告)などで考察を進めた。列島社会内在的な日本中世形成史論について、「山寺における文字文化の形成と発見―三河国普門寺文化遺産―」(論文)、「東アジアの中の『大般若経』と民衆生活実感」(報告)などで探究した。両者を総合しつつ『平安京と中世仏教』を執筆した。 地域と寺院・仏教の関係について、特に山寺に即して解明する課題に集中し、愛知県域と三重県域を中心に、文献探査とフィールドワークを進めた。三河国の普門寺・瀧山寺、尾張国大山寺、伊勢国近長谷寺、美濃国の櫻堂薬師・飯高観音などを特に重視した。その成果は、すでに一部を公表しているが、なお次年度以降に研究継続する予定である。 日本中世における山寺の重要性について、研究構想段階以上に大きいことが理解できてきた。その場合、里山に立地する山寺と里人との関係を復元するだけでなく、山寺間の広域的なネットワークの存在や、巡礼拠点としての役割を解明する課題が浮上した。それに伴い、東アジア世界での広がりだけではなく、世界史上の聖地巡礼を視野に入れる計画を含めるにいたった。論文等の執筆は次年度以降に持ち越しているが、調査研究を蓄積しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の論文執筆と学会報告によって、研究の小括を示すことができた。基礎的作業としての史料調査について、ほぼ計画に即して遂行できた。『愛知県史』『三重県史』の通史編執筆は、長年の準備を踏まえたもので、刊行年が本研究期間と重なったのは偶然であるが、12世紀までの仏教史を担当したことによって、本研究課題の知見を生かすとともに本研究課題の前進を促すことになった。 単著『平安京と中世仏教』の刊行は、本研究の中間報告としての意味を持つとともに、学術的な反響を得ることで、自身の見解を相対化・反省する好機会になった。 普門寺(愛知県豊橋市)の史料調査に長く携わってきたが、『豊橋市埋蔵文化財調査報告書第141集 普門寺旧境内-総合調査編-』が刊行されることとなり、論考・史料解説・史料目録を分担執筆し、本研究課題の輪郭を明確化することとなった。 寺院の立地について、東アジアに視野を拡げて考察する計画について、文献からの考察を進めているが、現地踏査は実現していない。一方、研究遂行課程で、日本中世の山寺をめぐる広域的なネットワークの存在が明らかになり、その人的交流の実態解明が必要であることを理解するに至った。この点は、聖地巡礼という、世界史上の動向を視野に入れた考察が有効であることも、近年の研究動向から学ぶことができた。そこで西ヨーロッパのキリスト教圏にあるサンティアゴデコンポステーラ(スペイン)を踏査し、比較史の実際を試みることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
東アジア世界の中の日本中世形成史と、列島社会内在的な日本中世形成史を、日本中世仏教形成史に結びつけて論じる課題に即して、10世紀から12世紀を中心に史料調査と現地踏査による実態解明を進め、民衆史における意志的普遍思想の表出を解明する。個別事例は、尾張国や三河国など東海地域を中心としつつ、史料と研究史のある和泉国・摂津国・播磨国などを視野に入れる。 山寺の広域的なネットワークと人的交流、また聖地巡礼の社会史について、日本列島と東アジア世界を見渡すとともに、直接には連動しないが比較史の対象として重要な世界史状況に視野を拡げる。 おおむね、史料調査・現地踏査の基礎作業と、論文執筆と学会報告による個別成果の蓄積とを継続する。平成29年度までの計画とすることは変更ない。
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Causes of Carryover |
奈良国立博物館での調査出張を計画し、旅費の使用を見込んでいたが、先方の事情によって年度内の日程調整ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
奈良国立博物館の調査受入者と日程調整の上、旅費として使用する。
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Research Products
(11 results)
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[Book] 愛知県史 通史編1 原始・古代2016
Author(s)
上川通夫・福岡猛志・斎藤基生・渡邊誠・永井宏幸・加藤安信・宮腰健司・伊藤秋男・赤塚次郎・服部哲也・岩原剛・平野岳美・丸山裕美子・稲葉佳代・梅村喬・井上喜久男・神野清一・西宮秀紀・安原功・金田章裕
Total Pages
1~898(612~641,650~663,746~785)
Publisher
愛知県
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