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2015 Fiscal Year Research-status Report

江戸商人の業態の計量分析と公儀との関係性

Research Project

Project/Area Number 26370787
Research InstitutionTokyo Institute of Technology

Principal Investigator

山室 恭子  東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (00158239)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 小笠原 浩太  東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (00733544)
イ チャンミン  福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50632436) [Withdrawn]
Project Period (FY) 2014-04-01 – 2017-03-31
Keywords江戸 / 商人 / 栄養摂取
Outline of Annual Research Achievements

計画2年めの本年度は、前年度に構築したデータベースの拡張を主眼とした。データベースの基盤として江戸商人関連の資料を網羅し集成した現状で最良の情報源『江戸商家・商人名データ総覧』全7巻(2010年刊行)を用い、いったん3939件の個票データベースを構築したが、分析の進展にともない、より特化した新たなデータの切り出しが必要となった。具体的には商業活動全般を網羅するのではなく、材木や炭薪、油などエネルギー関係の資源がどのような形で供給されたか、および食料事情、とりわけ米以外の新しい栄養源に着目することの重要性がクローズアップされてきた。
すでに初年度に江戸の商業の特徴として、平均存続年数が15.7年と一代にも満たない短さで参入と退出を繰り返す大店の商人たちの様相が浮かび上がり、通説のイメージと大きく異なる不安定さが検出されている。かつ株の相続は金銭を媒介とした譲渡が半数を占め、血縁原理と程遠いことも判明している。これらの一般的な特徴がエネルギー関係の店舗や食料事情とどうリンクしているかも検討の課題として上がってきた。
こうした、いわば第2ステップのデータベース化の対象として、エネルギー店舗については材木・炭薪・油、新食料や嗜好品については茶・煙草・砂糖の店舗に焦点をしぼり、ふたたび『江戸商家・商人名データ総覧』に戻って、8000件に及ぶデータベースを構築した。これによってエネルギー事情と栄養摂取という2つのテーマに特化した分析が可能となる。現在、分析を始めるまでの前段階の作業がほぼ終了したところである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

初年度にデータベースの構築と分析がかなり進展していたため、新たな局面を見出すフェイズに進展させることができた。
とりわけ2015年5月に邦訳が刊行されたばかりのK.ポメランツ『大分岐 THE GREAT DIVERGENCE』から大きな示唆を得て、労働者がどのような栄養摂取をしていたか、米飯だけを栄養源としていた状態から、茶や煙草などの嗜好品の流入、あるいは砂糖の廉価な提供による菓子類の摂取へと大きくその食生活を旋回させていたのではないか、という仮説を構想できたことが、研究の新局面を導いている。すなわち、ポメランツが「薬のような食品」と称するところの茶と煙草、そして砂糖がいかに廉価に大量に提供されたかを江戸について詳細に検討することで、肉体労働から頭脳労働へという「働き方」の変化をあぶりだし、世界的な比較軸のなかでの江戸時代の位置を検証することが視野に入ってきた。
この仮説を検証するための新データベース構築も順調に進展したので、最終年度へ向けて分析に集中できる段階に達している。

Strategy for Future Research Activity

データベースの構築が終了したので、仮説検証の分析に集中する。
同時に定性分析の対象として、以下の2つの情報源にも目配りする。
・『東京市史稿』 産業篇 第35巻-第54巻(寛政2年1790-天保12年1841) 江戸の町の行政に関わる事項と関連資料を年代順に掲げているので、寛政期以降の公儀の政策を通時的に追って、その傾向や揺れを検出する。ただし、本研究の焦点となる天保の改革期以降は未刊なので、株仲間解散とその復興については、別に情報源を求めなくてはならない。
・『諸問屋再興調』 全15巻 嘉永4年(1848)の問屋再興に際して、各問屋の再興の可否を検討するために町奉行所に集積された調書類。公儀がどこまで業界ごとの個別状況を把握していたかという行政側の視点とともに、町人たちから上げられた嘆願書等を通して、彼らが行政に何を期待していたか、商人サイドの意向をも汲み取りたい。
ほかに法令集の『江戸町触集成』全20巻や旧幕府文書を良く拾っている『日本財政経済史料』全10巻など、先人が積み重ねてくれた営為のあとを追いながら史料探索を進めてゆく。

Causes of Carryover

共同研究者の小笠原浩太氏が2015年9月から2016年3月までロンドン(LSE)に滞在し、経済史の研究者との研究交流をおこなった。
ヨーロッパにおける最新の経済史研究の方法論を反映させるため、小笠原氏の帰国を待って具体的な研究計画を策定したために次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

最新の経済史の知見を反映させやすいようにデータベースを加工する作業の人件費、および分析に適合的な分析ソフトの購入に当てる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2016 2015

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] Nutrition and diseases in the low-income households in Tokyo in 19302016

    • Author(s)
      Kota Ogasawara, Kaito Kojima, and Tatsuki Inoue
    • Journal Title

      Discussion Paper,Social engineering,Tokyo Tech

      Volume: 2016-4 Pages: 1-50

    • Open Access
  • [Book] 大江戸商い白書2015

    • Author(s)
      山室恭子
    • Total Pages
      227
    • Publisher
      講談社

URL: 

Published: 2017-01-06  

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