2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370799
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中川 恵子 (末永恵子) 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10315658)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ペスト / 江口豊潔 / 防疫 / 海南島 / 防疫給水部 / 防疫斥候 / 軍医部 / 広東 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日中戦争期に日本軍が占領した海南島において実施された医療政策についてを実証することを目的とする。本年度は、1939年(昭和14)に同島で発生したペストに対して実施された強圧的な防疫について検討し、この防疫の実施にみられる軍の論理を明らかにし、『15年戦争と日本の医学医療研究会会誌』16(2)に投稿した。 論文では、以下の点を明らかにした。 海南島におけるペスト防疫は、軍による軍のための防疫であり、現地民に対する衛生管理の実施もペストを軍に波及させないことを目的とした。したがって、ペスト汚染地であっても軍は撤退せず作戦を遂行したため、防疫は作戦に資することを最優先の課題とし、ペスト流行地における「討伐」も実施され、兵に感染者を出した。同時に軍の駐留地では、ペストの蔓延を予防する措置として家屋の焼却、捕鼠、予防接種、患者と家族の強制隔離、交通遮断が断行され、住民の生活へ大きな影響を与えた。そして、結果的に防疫を実施する軍の支配は通常よりも格段に強まった。海南島のペスト制圧は、ペスト汚染地でも作戦を継続し、占領を継続した先例を作ることとなった。以上が論文の要約である。 また、医療支援団体博愛会の海南島における活動に関する史料収集につとめた。台湾総督府博愛会の医療活動に関しても学会誌に投稿予定である。海南島をめぐる政策と台湾総督府との関係、および動員される台湾人の動向等にも注目して調査をすすめ、海南島支配の全体像の中に、医療政策を位置づけたいと思う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料閲覧に時間をさいて、もう少し多くの史料を発掘できればと思う。また、大きな研究史の流れにどのように寄与するのかをじっくり考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度が最終年度なので、成果を論文にまとめて投稿したい。
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