2016 Fiscal Year Annual Research Report
Hygiene and health policy of Hainan Island under Japanese occupation
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26370799
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中川 恵子 (末永恵子) 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10315658)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海南島 / 南支那防疫給水部 / 江口豊潔 / 陸軍軍医学校 / 731部隊 / ペスト |
Outline of Annual Research Achievements |
海南島におけるペスト防疫に、731部隊から南支那防疫給水部に赴任した江口豊潔が関与していたことを明らかにし、その地域防疫の実態を検討した。江口の防疫活動に関連した人物の論文等の著作を追究してみると、陸軍軍医学校や731部隊の人脈に行き着くことになった。これまで、細菌戦の側面からこれらの組織は注目されていたが、そればかりではなく、防疫、軍衛生、給水、諜報、兵要地誌等、多面的な把握が必要であると痛感した。 そこで、今年度は、海南島から少し離れ、731部隊で兵要地誌やソ連の衛生状況を研究していた村上隆や、731部隊や北支那防疫給水部で昆虫を研究していた篠田統、京都帝国大学衛生学教室教授の戸田正三に対象を広げ、戦争と防疫および衛生の問題について研究発表を行った。 村上はや篠田や戸田など個人が行った研究を検討すると、細菌戦や人体実験という側面だけではなく、住民の宣撫工作や軍隊の環境衛生研究、兵要衛生地図の作成といった軍事研究所の側面も浮かび上がってきた。軍事研究の実態に即して見ることによって、731部隊が当時の医学界の中で容認されていた理由がよりよく説明できると考える。 細菌戦は、細菌学や病理学だけで成り立つものではなく、気象学、地理学、航空学、昆虫学、植物学、獣医学、化学、薬学等の研究者や技術者が必要であることを軍上層部は知悉していたのであろう。だからこそ、哈爾浜郊外の平房に作られたのは、一大自然科学研究所である必要があったのである。
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