2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370801
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
白川部 達夫 東洋大学, 文学部, 教授 (40062872)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肥料 / 農業経営 / 干鰯 / 鯡粕 / 〆粕 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、当初目標とした摂津国武庫郡上瓦林村岡本家文書の「万覚帳」以下農業経営帳簿の分析データの作成を進めるとともに、各地の「万覚帳」など農業と肥料に関する調査を行った。岡本家では、享保期からの施肥記録である「農事之実録」をデータ化して、分析態勢を整えたほか、「万覚帳」で一番整理のむずかしい日常生活購入記録をデータ化している。詳細で読めない点もあるが、価格だけでもデータ化すれば、経営分析を進める上で生活支出が計算でき、作業がスムースに進むので必須の前提作業となる。また農民層分解の様相の確認も必要なので、高帳などのデータ化も進めている。また肥料商分析では、近江屋市兵衛家文書のデータのチェック作業を行い、分析を一部論文化した。調査では、主として北摂津の高槻・茨木・寝屋川・大東・枚方などの自治体の博物館などを調査し関係資料の所在確認を行った。高槻市柱本村・田中佐一家文書など比較的経営の全容が分かる史料を撮影した。しかしその質は一様ではなく、岡本家文書を凌ぐものは発見できなかった。 また今年度は、アメリカ、ハーバード大学ライシャワー研究所で9月4日にワークショップ「19世紀日本の地域経済と市場」が開催され、その報告「19世紀前半の肥料商と地域市場」を行った。従来個別分析を積み重ねてきた研究を大きな視点からまとめる作業を試みる機会を得たことは、収穫であった。さらに「大坂干鰯屋近江屋市兵衛の経営」(三)を発表して、慶応期より明治10年代までの近江屋の仕入れ状況を明らかにした。明治8年ごろまでが同家の仕入れのピークで、市兵衛が第四十二銀行頭取になって大阪財界に進出する明治10年以降は、仕入れ額は縮小していくことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は、大坂を中心とした先進的農業地域の経営帳簿である「万覚帳」の調査・撮影および史料のデータ化とその分析にある。なかでも摂津国武庫郡岡本家の「万覚帳」のデータ化と分析を当面の課題とした。調査とデータ化はある程度順調に進展したので、この点では、作業は概ね進んでいるといえる。しかし今年度は調査が意外に手間取って、時間が取られた。近年、各自治体の博物館・郷土資料館などの設置と資料公開体制の整備が進み、調査先が拡大した。研究上は、有利なことで望ましいのであるが、一方で作業量が大きくなり、拡散しがちである。この点が一つの問題点であった。また今年度はハーバード大学でのワークショップの報告が入ったため、そちらにも多くの時間が費やされた。本研究の企画以後に起きたことなので、予想外の出来事だった。ただ報告「19世紀前半の肥料商と地域市場」を作成することにより、これまで積み重ねてきた個別研究を整理して、より広い文脈で位置づけることができたので、その点は、大きな収穫だったといえる。さらに予想されたことではあるが、古文書のデータ化はある程度進んだが、その分析のために、データの確認作業が大部で、論文化が進まなかった。ことに近江屋市兵衛家文書のデータチェックが膨大で、外の作業の渋滞の原因になった。このためもあり当初考えていた岡本家の農業経営の分析が進まなかったのは、残念な結果となった。次年度挽回したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、研究の最終年度なので、目標とした肥料商と農業経営の分析、論文化を優先して行う。なお一部には、関連史料の調査を実施する。 史料のデータ化では、引き続き岡本家文書のデータ化を進め、このチェックと分析、論文化に着手したい。近江屋市兵衛家文書は、最後の明治16年までチェックが終わったので、論文化して分析を終了したい。近江屋市兵衛家文書は、6月頃までに分析・論文化を終える予定で、その後、岡本家文書のデータチェックを行い、一部を論文化し、所期の目的を達成したい。 調査については、最終年度と言うこともあり、研究代表者の負担を論文化に向けるため多少控えめにする方針であるが、2015年度調査の継続分として、関西大学図書館所蔵の真門三番村野口家文書の調査や岡本家文書の補足調査などは行う予定である。 岡本家文書のデータ化は、これまで通り、経営分析を行う上で、作業上必須の項目で、手間が掛かる生活費支出の部分をアルバイトにデータ化させる作業を優先的に進める。また分析結果を論文化するときに必要な、村落構成の変動を把握する持高変遷のデータ化を継続して行う。 近年は、アルバイトに熟練者を得られたので、データ自体はかってより正確なものとなってきた。しかしそのチェックは相変わらず、研究代表者の仕事にならざるを得ない。研究倫理からいっても研究者として当然の作業ではあるものの、その手間は膨大なものになることが予想される。その点をどのように時間配分して、成果につなげられるか今年の課題となる。
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Causes of Carryover |
本研究の活動は、調査とアルバイトによるデータ化が中心である。残額はアルバイトを使用した残りで、4千円に満たない、わずかな金額である。すでに3月休みに入っていて、アルバイトを予算消化のために短時間大学へ出校させるのは意味がないので、調整分として残した。来年度もあることなので無理な消化はしないで、次年度に回すことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アルバイト代に充当して使用したい。
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Research Products
(3 results)