2016 Fiscal Year Annual Research Report
Images of the Umayyads in al-Andalus and al-Maghrib
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26370815
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 健太郎 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80434372)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウマイヤ家 / アンダルス / マグリブ / カリフ / モリスコ / スペイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マグリブ・アンダルス地域という中東地域とは異なる地域の視角からウマイヤ家像の変遷を明らかにすることである。2016年度は、前年度に引き続き、11世紀以降のアラビア語史書や伝記集にあらわれるウマイヤ家像を検討するとともに、2回の海外調査を実施した。5月のチュニジア調査では、チュニジア国立図書館においてイブン・ハルドゥーンの史書などの関連アラビア語史料の写本調査を実施した。また、チュニジアの研究者たちとの意見交換をおこなった。8月のスペイン調査では、グラナダ近郊のウマイヤ家関連史跡の調査を実施した。その過程では、現代スペインにおけるウマイヤ家像という新たな問題も浮かびあがってきた。すなわち、ウマイヤ家の末裔を名乗る16世紀半ばのモリスコ反乱の指導者アベン・ウメーヤ(イブン・ウマイヤ)をめぐる、様々な理解の仕方である。反乱の舞台となったバロル村には、アンダルシーア地方のイスラーム団体によるアベン・ウメーヤを顕彰するプレートがあり、産業に乏しい村の振興のためであろうか行政もそれを活用しようという動きがある。一方で、伝統的にはこの地域には反乱時のモリスコの暴力行為についての伝承も伝わっている。スペインにおいては、アンダルスをめぐる歴史認識は複雑で多様な様相を呈しており非常に大きな研究テーマであるが、本研究の成果もこうした問題と関連づけつることで、さらなる広がりが期待できるであろう。
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