2016 Fiscal Year Research-status Report
明代中国における審判・軍功評価事例の集積による辺疆統御様態の解明
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26370816
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
荷見 守義 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00333708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 都司 / 孫承宗 / 永楽政権 / 辺境紛争 / 档案 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施した研究の成果は、著書1冊、論文3編であった。1368年に建国された明王朝は周知のように朱元璋の手になる王朝である。従って、王朝の骨格やその運用方法は朱元璋の意思を体現しているということになる。ただ、朱元璋の没後にその孫である第二代建文帝と朱元璋の第四子燕王との間に勃発した靖難の役は足掛け4年にわたる、明朝国軍を二分した内戦となった。この戦いにおいて終始、無勢であった燕王であったが、最終的にはその燕王が勝利して新政権である永楽政権を樹立したのであった。永楽帝は自ら率いた軍団の将兵を軸に建文政権側の軍隊を解体吸収して、自らの政権基盤を強固にすることに成功した。明王朝とは第三代皇帝永楽帝の時に新たに作り変えらえたのである。『永楽帝 明朝第二の創業者』(山川ブックレット 人38)はそのような永楽帝による王朝改造の道筋を最新の研究成果に立脚して見通したものである。論文「孫承宗と明朝档案」は大学士として唯一、辺境防衛の前線に出て防衛の指揮を執った孫承宗を取り上げ、彼が直接かかわった档案史料2編を取り上げて、前線からの詳細な報告を続けた彼の行動様式を探ったものである。「明代都司掌印官の基礎的考察 : 遼東都司の場合」は一地方の衛所組織を統括するはずの都司が実は明朝一代を通して地盤沈下していく有様を掌印官の肩書の動向を追うことで跡付けたものである。「辺境紛争と統治‐万暦九年の遼東鎮‐」は明朝後半期の鎮守にあっては都司の機能が低下して、巡撫等の統治の下ではその一報告機関に過ぎなくなっていることを档案史料から跡付けたものである。明朝辺境守備部隊の軍功評価は、朱元璋が形成し、永楽帝が作り変えた軍隊制度において動いていたのであり、都司の地位低下と、その極みである大学士の辺境出馬という環境で動いていたことが分かって来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明朝辺境の遼東鎮において進む体制変革についての手掛かりをつかみつつあり、その中における軍功評価問題の理解に大いに資するものがあった。ただ、軍功評価そのものの資料収集は目下進行中の作業であり、予定に対してぎりぎりのところである。
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Strategy for Future Research Activity |
5月に予定している国際学会における学会発表(中国)、及び雑誌論文執筆を予定通り積み重ねていく予定である。
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Causes of Carryover |
デジタルデータの購入が予想外に手間取り、翌年度に手続きを持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度内に前年度積み残しのデータ購入を進める予定である。
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